14-2 謎の組織との接触
「きっと情報提供者がいたんだろうね」ジット爺さんが言うと「もう一つ。この騒動が起きる前に、新しく狩り人を二人、雇ったということです」スタンが続ける。
「ホウ、二人か」
「しかし、その二人はこの騒動後、姿が見えないそうです。逮捕されたのか逃げたのか、行方不明だそうです」
「そうか。で、君たちの目的のものは無事だったのかね?」
「ものという言い方はやめてください。彼らと言ってください」
「これはすまなかった」ジット爺さんは頭を下げ「で、どうだったね?」
「幽閉されていた彼らは全員、逃げ出していたことがわかりました」
「では、新しく雇われた二人組が、故意に騒動を起こした可能性があるね。もしかしたら、リークしたのも……」
「そうですね。しかし、確実な情報が取れなかったので、推測範囲にとどまります」
「そうか。にしても、あれをどうやって逃がしたのか、方法が知りたいね」
「あんた、どこかの領主の元で働いてたな?」タキと名乗る痩身の男がきつい口調で聞くので「なぜだね?」ジット爺さんが聞き返すと「彼らのことを「もの」と言ったからだ」
「……ハハハハハッ! 昔身に付いたことは出てしまうね。そうだ、昔はここの領主に仕えてたよ」
「やっぱり!」タキが睨むと「では、狩りにも参加してたんですか?」聞き急ぐラルに「二年前まで陣頭指揮を執ってたよ」
「何だって!」一斉に敵意の目でジット爺さんを見ると「現役を引退しても俺たちの敵だ」スタンが今までの柔和な顔を崩すので「いや、それは違う」ジット爺さんは柔和な顔を崩さず答える。
「何が違うというんだ?」痩身のタキが聞くと「私が辞めたのは、あんな非人道的なことに嫌気が差したからだよ」
「しかし、彼らを狩ってたことは事実だ」
「ああ、そうだな」
「参ったな。とんでもない村へ来てしまった」フッとスタンが笑う。
一番驚いたのはショウたちだったが、とりわけラルは恐怖が募った。
敵地だということはわかっていたが、自分の敵だった男に助けを求め、世話になっている。
「誤解しないでくれ。私も仕方なくやったことだ」
「どういう理由があろうとも、事実は否定できない」と言うタキの言葉に、他の男たちは敵を見る目を崩さない。
「しかし、私も家族を盾に取られてたので、やるしかなかったんだ。私にとって、家族が一番大切だからね」
「では、脅されてたというのですか?」サラサラヘアのテッドが聞くと「私はスパイだったんだよ」
「スパイ!」さらに驚いて身構える。
「それで、どういう経緯で狩りの陣頭指揮を取ることになったんですか?」
「私の存在がここの領主の耳に届いてね。まあ、早い話が引き抜きだよ」
「家族を盾に取っての?」
「……そうだ」
「相変わらずひどいことしやがるな」吐き捨てるように言うタキ。
「で、ご家族の人達はどうなったんですか?」テッドがさらに聞くと「仕事を続けることができなくなったと申し出たら、家内は返してくれたが、私が裏切らないように、娘たちは領主の屋敷に監禁されたままだ」
その言葉を聞いて、ショウはジット爺さんの家でお茶をご馳走になったとき、奥さんが(よそへ行く気はない。ここで骨をうずめる)と言っていたことを思い出した。
「私は君たちと会える機会を伺ってたんだよ」ジット爺さんがスタンを見ると「私一人では、娘たちを連れ戻すことができないからね」




