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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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13-2 絆からわかるお互いの距離

 

 しばらく沈黙が続いた後「戦いに費やした時間を返してほしい。(みにく)くなってしまった。知らなくていいことを知ってしまった。裏切り、復讐心、嫉妬、悪知恵、失ってしまったものがたくさんある。そして、信じるということを失ったことが、一番悲しい。ごめんなさい。まだ、ショウのこと、信じきれてない……」


「信じることは強制されてすることじゃない。今は、少しでも信じてくれていればいい」

「優しくされると、辛い」

「なぜ?」

「醜い心を持った私には、その優しさが重いから」

「醜い心を持ったのは、人間だ」


「いいえ、私は変わったわ。人を(おとしい)れることに何の抵抗も感じなくなった。このまま行ったら、誰かが仕掛けた罠にかかって、やられてしまうでしょうね」

「そんな事にはならない」


「もしかしたら、明日の朝には、死んでるかもしれない」

「そんな事にはならないと言ってるだろう」


「私自身でさえ先のことがわからないのに、なんでそう言い切れるの?」

「俺がいるからだ」


「なんでショウがいると、私は死なくて済むの?」

「危険なことをさせないからだ」

「私の任務に、危険じゃないことなんてない」

「そのうちわかる」


「なんでそのうちなの? そのうちが来る前に、私は、死んでしまうかもしれないのに」

「何度も言わせるな。俺がいるかぎり、そんな事はない」


 再び沈黙があった後「そういえば、体調はどうだ? 少しは薬が効いてきたか?」

「……あまり、良くない」


「昨日のせいか。ごめん、俺のせいだ」

「ショウのせいじゃない。私が今まで、ショウに、酷いことしてきたのが、いけない」

「それはお前の思い込みだ」


「エッ?」

「お前の思い込みだよ」

「そんなことない」

「俺は、酷いことされたと思ってない」


「……なんで? 普通は、怒るでしょう?」

「前に言っただろう。目標達成に向けて前進できるなら、多少のことは目をつぶるって」


「……変なの」

「何が変なんだよ」

「……変だよ」


「……じゃあ変なんだろう」ショウはお茶を飲み干すと「もし体調が良くなったら、外へ出ようと思ったんだけど、行くか?」

「……外に、出たい」

「なら行こう。少しくらいなら大丈夫だろう? 家の庭にきれいな花がたくさん咲いてるぞ」


「大丈夫、かな?」

「庭に出るくらいなら大丈夫だ。俺もいるし、気分も少しは良くなる」


 そう言われてキラはベッド脇のバッグからシガレットケースのような金属の箱を出すと、開けて中からチップを取りだし、額に付けると、ショウに貸してもらったバンダナで額を隠し、支えられて部屋から出る。


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