11-1 過去からの産物が作る不和
キラはしばらくの間黙ったあと「何言ってるの? 勘違いしてない?」
「勘違いだとは思えない」
「なんですって?」
「今までの話で違うところがあるか?」
「それは……」
「はぐらかそうとしても無駄だ」
「はぐらかしてなんかいない。本当に勘違いしてるんだもの」
「そこまで言うのなら、どう勘違いしてるのか言ってみろ」
「さっきも言ったとおり、私は利用するために、一緒に行動してただけなんだもの。もしショウが敵に捕まったら始末するつもりでいたし、あなたを開放しても何の問題もない」
「なぜ?」
「あなたが知ってることを敵にバラされても、大した被害にならないから」
「その根拠は?」
「敵にバレても、大して役に立たない情報しか知らないから」
「そうだとは思えないけどな」
「そういう根拠は?」
「俺は、グループのメンバーを見付ける手立てを知ってるし、グループの構造や行動パターンも知ってる」
「それはすごい。どういう内容かしら?」
「メンバーは、お前と同じような行動を取ってるはずだ。キラと名乗り、仲間を作らず、一人で行動してる。メンバーは一つの所に長く留まっていない。そして、シルバーフェニックスが幽閉されてる所に現れる」
「……」
「グループは、まず中心となるセクションで仲間が幽閉されてる場所を調べ、救出メンバーが所属するチームがいくつかあって、そこに情報を送り、助け出した後、引き取りにいくメンバーがいる。そのあと療養させる施設へ連れていき、アルバートのような、治癒再生能力を持つメンバーが彼らの治療に当たる」
「……」
「その療養施設も至る所にあるはずだ。あれだけ体力を消耗してるのに、遠くへ連れていくことは不可能。ある程度体力が回復するまで治療する必要がある。その施設も、きっと街中にあるだろう。人があまり行かない場所に施設を作れば、必要物資を調達するのが大変だし、誰かにその場面を見られでもしたら、いっぺんでバレてしまう」
「……」
「他にもわかったことがいくつかあるが、今はこのくらいにしておくか」
「……」
「今までのことで、どこか違ってるところがあるか?」
「……」
「合ってるらしいな。ま、そうだろう。この事は確信があるからな」
「……」
「どんな事があってもしゃべらないから、心配するな」
「……」
「お前たちを裏切るようなことはしない」
「フウ」キラはため息を吐くと「本当に侮れないわね。まさか、そこまで推測してるとは思わなかった」
「推測じゃない。確信があると言っただろう。ダテに情報部にいたわけじゃない」
「……」
「お前を追い詰める気はない」
「追い詰めてるじゃないの!」
「お前がしゃべらせたんだろう?」
「当然でしょう? どんな事を考えてるか、知る必要があるわ」
「これは俺の考えじゃない。わかったことだ」
「そうよ。あなたがどこまで知ってしまったのか、聞きださないといけない」
「余計なことまで知ってたら、催眠術でもかけて記憶を封印するというのか?」
「そのとおりよ。あなたは必要以上のことを知る必要ないもの」
「それは難しいな」
「そうでもないわよ。利用価値がなくなるまで催眠術を掛けておいて、その後はきれいさっぱり記憶を封印すればいいんだもの。あと腐れなく」




