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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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7-3 情報収集のための散策

 

「いい年した大人を揶揄(からか)うもんじゃねえぞ!」店主が照れ隠しに大声を出すので「照れなくてもいいじゃないですか」

 すると、機嫌をよくする奥さんが「あんた、気に入っちゃったよ。名前はなんて言うんだい?」

「ショウです」


「あら、そういえば、連れがいるんじゃなかった?」

「はい。ちょっと疲れがでて、休んでます」

「そうなの。いいわ。今夜、私が特製の精がつくシチューを作ってあげるよ。この人が村に来たときも作ったんだけど、元気が出るよ」

「ああ、あれか。あれはいいぞ。遠慮しないで食べな」


「でも、わざわざ作ってもらうなんて」

「気にしなくていいわよ。できたら持ってってあげるから。ジット爺さん家の隣の空き家にいるんだろう?」

「情報が早いですね」

「そりゃそうよ。小さな村だからね」


「では、お言葉に甘えてお願いします。ああ、注文つけて申し訳ないのですが、連れが肉類ダメなので」

「あら、ベジタリアンなの?」

「そうではないんですけど、ちょっと苦手なので」

「それじゃあ、生姜を効かせた野菜シチューにしようか」

「ああ、それがいい。煮るとダシが出るキノコがあるから、それを入れれば美味くなるぞ」


 ショウはお礼を言うと、シチュー用の野菜の代金を払って店をあとにし、通りをさらに奥へ歩いていくと、行く先々でいろんな人が声を掛けてきた。


 さすが陸の孤島だけあって外から人が来ることが滅多にないため、四・五歳くらいの子供たちまでショウたちのことを知っていて「お兄ちゃんが昨日来た人?」と声を掛け、周りに集まってくる。


「お兄ちゃん、背が高くてかっこいい。なにしてるの?」

「女の人と一緒なんでしょう? 恋人なの?」

「車で来たんでしょう? どこから来たの?」


(一晩であっという間に情報が拡散されるんだな)

 子供たちの質問内容から、どのくらいの情報が広がっているのかわかる。

(こんな感じで、例の謎の組織の情報が取れるといいんだけど)


 こういう所ではいろんな人と親しくなると様々な情報が手に入るので、なるべく会話することを心掛けた。


「あんた、日中出歩くなら帽子をかぶったほうがいいよ。日射病か熱中症になっちゃうからね」

 雑貨屋の定員さんがわざわざ奥から麦わら帽子を持ってきて「あげるから持っていきな。あんたみたいな若い子はこんな帽子いやかもしれないけど。これはお連れさんの分」と二つ渡され「ありがとうございます」受け取るとかぶり、店をあとにする。

 

 その後、家に戻って鍵を開けようとすると後ろから声を掛けられ、振り向くと隣の奥さんが立っていて「クッキーを焼いたのよ。召し上がって」小さなバスケットを出すので「ありがとうございます」受け取ると「まだ温かいですね」


「今、焼いたばかりなの」

「そうなんですか。いろいろと気を遣ってもらってすみません」

「いいのよ。息子ができたみたいで嬉しいわ」

「そうですか?」

 ショウの反応に満足すると「では」と言って帰っていく。


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