7-2 情報収集のための散策
ショウはその足で村を一周した。
村外れには、小さいながらもログハウス風の丸太で作られたオシャレな二階建ての学校があり、楽しそうな声が校庭を賑わせている。
村を花でいっぱいに。
どの家の庭やエントランスにも、色とりどりの花が咲き乱れている。
(アイツが見たら喜ぶだろうな)
その時、一匹の鶏が、お前、見掛けない顔だな、とでも言いたげな様子で、こちらを見ているのに気が付いた。
「ヘェ、放し飼いにしてるんだ」
佇む鶏の後ろから、数羽の鶏が走り出てきた。
ここでは、ゆっくりと平和な時間が過ぎている。
メイン通りの十字路を右に曲がって少し行ったところではお店が軒を連ねていて、グロサリーストアでは店主だろうか、エプロンを付けた中年男性がせっせと品出ししている。
「おや、見掛けない顔だね。もしかすると、ジット爺さんが連れてきた旅の人というのはお前さんかい?」手を止めて聞いてくるので「そうです」
「どうだい。この村の居心地は?」
「快適ですよ。途中でお爺さんと会えてよかったです」
「ワハハハハッ! そうか。そんなふうに言ってくれると嬉しいね」
「そうだ。野菜を少し貰っていこうかな」店の前に並んでいる木箱を見ると「好きなのを選びな。どれも採れたての旬の野菜だからうまいよ」
「じゃあ、お勧めをいくつか選んでもらえますか?」
「いいよ」近くに置いてある手編みの買い物カゴを取って選んでいくと「ところで、どこから来たんだい?」
「海を渡ってきました」
「ホウ。この大陸に来るなんて珍しいね」手を止めて向きなおる。
「ルポライターをしてるんで、取材に来たんです」
「取材ということは、記者とかいうやつかい?」
「はい。いろんな所を周ってきたんですが、まだこの大陸に来てなかったので」
「そうか。俺も若い頃はあちこち旅をしたよ。ここでかみさんに会わなければ、ずっと続けてただろうね」
「地元の人じゃないんですか?」
「ああ、俺もよそ者だよ」
「あなたの足を止めさせるなんて、さぞかし奥さんはきれいな人なんでしょうね」
「オウ! 村一の美人だったよ」
「焼けるな! 嫉妬した男が山のようにいたんじゃないですか?」
「ああ、結婚式の日は大変だったよ!」
そこへ、店の奥から中年の女性が出てきた。
「噂をすれば、ですか?」
「あら、見かけない顔ね」
「ジット爺さんが連れてきた旅の人だよ」
「あら、そうなの」
「お邪魔してます。今、奥さんの話を聞いてたんですよ。村一の美人だって」
「もう、何言ってんだよ、あんたったら」店主の脇を突くと「本当のことだろう?」
「こんな小さな村じゃ、エバれないよ」
日焼けはしているが、瞳の大きなかわいらしい奥さん。
「それに、もう子持ちのオバさんだからね」
「今でも十分かわいいですよ」
「この人ったら。そんなお世辞言って!」
「おいおい、かみさんに手を出すなよ」
「とんでもない。そんな事したらオヤジさんに殺されてしまいますよ」
「オウ、覚悟しときな!」
「何言ってんだよ。こんなきれいで若い子が、あたしなんかを相手になんかしないよ」
「オヤジさんにこれだけ想われてるなんて、幸せ者ですね」
「あら、そんな」




