6-1 陸の孤島
翌朝、呼び鈴の音で目が覚め、玄関のドアを開けると、夕飯のお裾分けをしてくれた隣の奥さんが、バスケットを持って立っていた。
「おはようございます」小柄な人なので、目線を合わせるために屈むと「朝ごはんの差し入れにきましたよ」持っているバスケットを差し出すので「ありがとうございます。助かります」お礼を言って受け取ると「連れのお嬢さんの具合はいかがですか?」
「薬を飲んだので大丈夫だと思います」
「そうですか。もし良くならなかったらお医者様をご紹介しますので、いつでも言ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
「では」と言って帰っていく。
「そういえばアイツ、大丈夫か?」
バスケットをテーブルに置くとキラの部屋のドアをノックする。
返事がないのでもう一度ノックするが、やはり返事がない。
ドアノブを回すと鍵が掛かっている。
「まだ寝てるのか?」
気になりながらもリビングへ戻ろうとすると、鍵のあく音がしてドアが細く開く。
「なんだ、起きて、アッ」
フードをかぶって真っ赤な目をしたキラが顔を出すので「お前、まさか、寝てなかったのか?」ドアの前に行くと目を伏せるので「ごめん。大丈夫だと思ってたから」
当然、姿も戻っていない。
「隣の奥さんが朝食を差し入れしてくれたんだ。食べて薬を飲んでから寝たほうがいい。今度は付いててやるから」
すると、キラがノロノロと部屋から出てくるが、外から子供の声が聞こえてきたので驚き、部屋へ駆け込むと鍵をかける。
「大丈夫だ。きっと学校へ行く時間なんだよ」
その言葉を聞いて、ドアを少し開けるので「部屋で食べたほうが落ち着くだろう。持っていくよ」
冷蔵庫から昨日の残りのシチューを出してレンジで温め、果物と奥さんに差し入れしてもらったバスケットを持って部屋にいき、ベッド横のサイドテーブルに置くとバスケットの蓋を開ける。
「パンのいい匂いがすると思ったら、焼き立てみたいだな」
お皿に置くと、サラダ、スクランブルエッグ、ベーコンが乗ったお皿を出す。
「朝から豪華だな。ああ、ジャムも入ってる」
小皿にブルーベリーとママレードのジャムが入っている。
「ほら、そんなところに突っ立ってないで座れ」ベッド脇に立っているキラに声を掛けると「さあ、食べよう」パンを取ってママレードを塗り、一口食べると「オッ、うま」
キラも向かいに座ってパンを取り、ママレードを塗って食べると「おいしい」マカロニサラダを食べはじめるので「今日は食欲あるな」
「ベーコンは食べられない」
「ああ、肉類はダメだったな」
昨日よりはいくらか多く食べるので安心すると「残りはお昼に食べるか」




