3-2 恐怖の反動
「まだ食べるか?」
「……もう、いい」
「そうか。残りはあとで食べよう」果物を自分のバッグに詰め込むと「ご、ごめん、な、な、なさい」
「謝らなくていいと言ってるだろう」涙を拭く。
「で、でも……」
「これからは、どんな些細なことでも必ず話してくれ」
「……エッ?」
「お前がこんな思いをしてるなんてわからなかったから、フォローしてやれなかった」
「シ、ショウには、か、かん、関係ない、から、い、いわ、言わなかった、だけ、だけだよ」
「知らなかったから、フォローできなかったんだ」
「気に、し、しなくて、いい」
「なんで」
「い、いわ、言わなかった、わ、私が、悪い。つ、つっけんどん、な、た、たい、態度、取って、ご、ごめん、な、な、なさい」
「謝るなって、何回言えばわかるんだよ」
「こ、こん、今回だって、ショウが、い、いて、いてくれた、から、う、うまく、行ったのに、あ、あんな、あ、あく、悪態ついて、ば、ばかりで、ごめん、な、なさい」
「謝るなって言ってんだろう!」
「……また、お、怒らせ、ちゃった」
「怒ってないよ」
「わ、私って、ダメ、だ、だなあ」
「ダメなんかじゃない。もう何も考えるな」タオルで涙をふき「もう少し寝たほうがいい。傍にいるから心配するな」
すると首を横に振るので「眠れなくても疲れが取れる」
「お、思い、だ、だし、だしちゃう」
「じゃあ、寝るまで手を繋いでてやるよ」ベッドに腰かけ、キラの頭を撫ではじめる。
「手を、つ、繋ぐって……」
「どっちでも同じだろう? ほら、少し寝るんだ」頬を撫でると驚いた顔を向ける。
「こ、こ、こんな、こと、と、し、しなく……」
「お前が恐怖と戦ってるとき、何もしてやれなかったから」
「き、きに、きに、し、しなくて、ていい……」
「ごめんな。怖かっただろう?」
「も、も、もう、お、お、わった、か、から……」と言いつつ涙を流すので「まだ、恐怖が取れてないんだろう?」タオルで拭くと「も、も、もう、だ、だ、だ」と言うキラを抱きしめ「本当に悪かった」
「だ、だい、だいじ……」
「もうこんな思いさせないから、 だから、 大丈夫だなんて言うな」
「あ……あ~あ~」
「ごめんな。ごめんな。怖かったよな」声を上げて泣くキラの頭を撫でる。
「今夜も付いててやるから」
添い寝する形でキラの頭を撫でていると、昨夜と同様にショウのシャツをつかみ、しばらくすると徐々に鼻をすする音が少なくなって、途中からウトウトしはじめると、やがて寝息に変わっていった。
キラが寝たことを確認すると、こぼれ落ちている涙をタオルで拭き、そっと頬にキスをする。




