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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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3-1 恐怖の反動

 

 それからどのくらいの時が経ったのか、震えが徐々に収まり、ショウのシャツを握りしめる手の力が弱くなっていくと、寝息が聞こえてくるようになった。


 しばらく様子を見て深く寝たのを確認するとベッドに寝かせ、バッグからノートPCを取り出すと、いつかグループへ報告できるように、キラの状態を記録しはじめた。


 その後、キラは半日ほど寝ると、体力を使い果たしていたようで起き上がることができなかったため「大丈夫か? 顔を拭こう」濡れタオルでキラの顔を拭き「果物なら食べられるか?」サイドテーブルに置いてある果物(かご)を指すと「どう、した、の?」


「ここに来たとき、俺たちの手続きをしてくれたフロントマンが差し入れしてくれたんだ。この辺りの農家で取れるものを、毎日ホテルに持ってきてくれるそうだ」

「み、見たこと、な、ない、もの」


「そうだな。皮を()けばいいのか?」一つ取ってナイフで()きはじめると「じ、自分で、やる」キラが手を出すので「いい。俺がやる」


 梨くらいの大きさの薄緑色をした果物をリンゴの皮を剝くように切っていくと「今回は悪かった。うまく事を運ぶことに気を取られてて、気付いて当然のことだったのに」


 食べやすい大きさに切るとフォークに刺してキラに渡し「グループから、次の任務の準備期間をもらってるんだろう? だったら、その期間を利用して少し休もう」

「で、でも、早く、つ、つぎ、次の任務、に、つ、就か、な、ないと……」


「休むことも仕事だぞ。一流のビジネスマンは、仕事の効率をよくするために、オン、オフをうまく使い分けてる」

「任務、は、し、仕事、じゃ、な、じゃない。い、一名でも、多く、多くの、な、仲間を、助けな、きゃ」

「助ける側のお前が潰れたら、元も子もないだろう」

「……」


「さっき調べたら、次の任務地へ行く途中に村があるらしい。そこで少し休もう」今度は違う果物を取って皮を剝きはじめ「泊めてくれる宿屋があるといいんだけど、なきゃ野宿だ」キラを見ると、果物を持ったまま泣いているので「どうした?」


「あ、ご、ごめん。お、思い、だ、出しちゃって……」横を向き「い、いつまでも、みっとも、ない、よ、よね……」ゴシゴシと涙を拭くが「へ、へ、変だな。い、いつ、いつもなら、つ、次の日、には、お、おさ、納まる、のに」拭いてもあとから涙が出てくる。


「ホ、ホッといて、くれて、い、い、い、いいから……」唇を(かみ)みしめて、涙を押さえようとするので「どうすればいい?」


「……エッ?」

「こんなとき、どうしてやればいい? 何をすればいい? 何か言ったほうがいいか?」

「……ホ、ホッと、いて」

「ホッとけないよ」

「気に、し、しなくて、いい、いいから……」

「気になるよ。お前の泣き顔は見たくない」

「……」


「どうしたらいい?」

「気に、な、なるなら、見えない、と、と、ところへ、い、行くよ」ベッドの反対側から出ようとするので腕をつかみ「そんな身体でどこへ行くんだ。ここに居ろ」

「で、でも……」


「いいから戻れ」腕を引っぱって元の位置に戻すと「ご、ご、ごめ、ごめん、な、なさ……」

「謝ることない」

「……」


「一口でもいいから、食べろ」

「……の、喉を、と、通ら、ない」

「口に入れたら飲み込めるかもしれないから、かじってみろ」


 そう言われて小さく一口かじると何回か噛んで飲みこみ、少しずつ食べはじめるので、ショウも食べはじめる。


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