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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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2-3 不機嫌な理由

 

 しばらくして、泣き疲れたのか落ち着いてくると「何か飲むか?」

 小さく頷くのでサイドテーブルにあるミネラルウォーターのボトルを取り、コップに入れて渡すが、手の震えが止まらず、うまく飲めない。


「少しずつ口に含んで、それから飲め」コップを持って少しずつ飲ませるが、カチカチカチッ、震える歯がコップの縁に当たり、音を立てる。

 しかも、飲み終わっても、相変わらず震えが止まらない。


「何があったんだ?」涙を拭きながら聞くと「こ、こ、こわ、怖かった、こ、こわ、怖かった」

「怖かった? 何が怖かったんだ?」


「あ、あ、あ あんなに、ダ、ダ、ダーク、ル、ル、ルーラが、お、お、置いてある、な、な、な、な、なん、なんて、んて、お、お、おも、おもわ、おもわな、な、かった、かった」

「エッ?」


「が、が、がまん、がまん、し、しな、しない、と、と、い、いけ、いけな、いけなか、かった、かったの、の、の」

「……ごめん。そこまで思い付かなかった」


「シ、シ、ショウ、に、に、と、とって、とっては、た、た、ただ、ただの、か、か、鏡だと、と」


「ただの鏡だなんて思ってない。もう大丈夫だ。あそこの鏡は全部押収して……そうか、壊してないから、恐怖が取れなかったのか。そうだよな。怖かったよな。部屋一面にあったんだから。気付かなくて、悪かった」上着を掛け直すと「付いててやるから、少し寝ろ」


「ね、ね、ねら、ねられ、れ、れな、れない」

「俺が付いてる。こうやって傍にいるから」抱き寄せると「そ、そ、そんな、そんなこと、と、し、しなく、しなくて」

「ついててやるから、 お前が起きるまで傍にいるから、 だから、大丈夫だ」


 上着を頭からかぶせ、背中をポンポンと叩くが、一向に落ち着く気配がない。

 ショウのシャツを握りしめ、必死に恐怖と戦っている。


「気付かなくて悪かった。お前が不機嫌なのは、ワリッキーたちの態度に腹を立ててるからだと、勝手に思い込んでた。ミランドが見せた鏡の部屋を見たときのお前の状態を考えれば、容易に想像がついたのに。本当に悪かった」


 恐怖を極限まで我慢したことによる精神の拒否反応。


(恐怖を顔に出せば周りの人間に気付かれるから、平気を装っていなければならない。

 ワリッキーたちの話を聞けば、正体がバレたときの恐怖は計りしれなかったはずだ。


 あれだけのダークルーラが集められたところを、俺も見たことがない。

 この大陸の領主たちは、きっと同じように大量の鏡を所有しているだろう。


 ダメだ、これ以上、この大陸で任務を遂行することはできない。

 このまま行ったら、こいつの精神が壊れてしまうだろう……。

 何か、対策を考えないと)


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