2-2 不機嫌な理由
キラは相変わらずベッドの上で膝を抱えてうずくまり、異常なほど震えている。
「本当に、どうしたんだよ」ベッドに腰掛けると、再度理由を聞く。
ベッドで寝た形跡がないので、怖い夢を見たためとは考えられず、高熱が出ているわけでも寒くて震えているわけでもないが、確実に、何かの原因で異常な状況になっていることだけはわかる。
「とにかく、横になれ」寝かせようとすると「ヤダッ!」手を払いのける。
「何がイヤなんだよ。横になれば少しは楽になるだろう?」
「ヤダッ!」
「どうしたんだよ。どこか痛いのか?」
「な、なんでも、な、な、ない」
「何でもないわけないだろう。どうしたんだよ」
「な、な、なんでも、な、ない」
「……何があったんだ?」
「だ、だ、だいじょう、ぶ、ぶ、だ、だから……」
「……あの屋敷で何があったんだ?」
「だ、だ、だいじょう、ぶ、ぶ、だ、だから……あ、あした、たに、な、なれ、ば、ば、な、なお、なおる、か、から」
「いつもこんな症状が出るのか?」
「い、いつ、いつも、は、つ、つぎのひ、ひには、お、おさ、おさまる、の、のに……」
「なんだって?」
「あ、あ、あした、たに、な、なれ、なれば、お、お、おさ、おさま、おさまる、か、か、から」
(今まで、こんな状態を見たことないぞ)
「俺と会う前に起きてたのか?」
「だ、だ、だい、だい、じょう、う、うぶ」
「全然大丈夫じゃないぞ。何が原因なのかわかってるのか?」止まらない涙を拭いていく。
「だ、だい、だいだい、だいじょう、じょう、ぶ、ぶ」
「大丈夫じゃねえよ! どうしたんだよ!」
「ご、ご、ごめ、ごめん、な、な、な、さい」
「謝らなくていい。謝らなくていいから、何があったのか教えてくれ」
「ご、ご、ごめ、ごめん、な、な……」
「ほら、謝らなくていいから」抱き寄せると(エッ? こんなに痩せてたのかよ)肩を掴んでゾッとする。
「だ、だい、だいだい、だいじょう、じょう、ぶ、ぶ」
「何があったんだよ。こんなに痩せて、何を我慢してたんだ?」
(ン? 我慢?)
「何か我慢してたのか?」
「だ、だい、だい、だい、だい、じょう、じょう、ぶ、ぶ」
「何を我慢してたんだ? そういえば、気になってたことを、終わったら話してくれるんだったよな?」
「だ、だい、だいじょ、じょう、う、うぶ」
「キラ! ほら、話してくれるんだろう? 何があったんだ?」
「だ、だい、だい、じ、じ」
「ラル!」
「アッ! あ…あ…」顔を上げてショウを見るので「どうしたんだ?」
「あ…あ…あ~あ~」今度は声を上げて泣きだした。
「大丈夫。もう何も起きないから」大声をあげて泣くキラを抱きよせ、落ち着くまで涙を拭きながら、背中を擦り続ける。




