32-1 最終段階
一方、先に部屋へ戻ったキラはミランドと代わり、言われたとおり、仮眠を取るためにベッドへ潜り込むと、ミランドは前日同様、地下のジム室へ行き、ワリッキーやパフィオたちのちょっかいを無視しながら、ゆっくり体を動かしはじめる。
それから一時間後、ショウとダッケンがジム室へ入ってきて、それぞれ身体を動かしはじめると、頃合いを見てミランドが休憩室へ向かうので、ショウもあとから行くと長椅子に並んで座り、ミネラルウォーターを飲みながら「お前はどっちだ?」
「代役」
「そうか。計画を少し変更するから、昼食後、部屋にいてくれ」
「ここに来て変更?」ミランドが驚く顔を向けると「俺だけ別任務に就く」
「……会長側の計画に加わるの?」
「そうだ」と言って先に立つと、ジム室へ戻る。
お昼少し前にショウはキラの部屋へ行き、ドアをノックすると出てきたキラに「お前はどっちだ?」
「……本物」
「ちゃんと寝てたようだな。体調はどうだ?」
「少し、良くなった」
「……そうか」彼女を連れて一階の食堂へ行くと、メインのキッチンで今夜のパーティの準備を進めていた。
その光景を見つつ隠し扉の奥の食堂へ行くと、いつものようにキラのトレーにも料理をのせ、空いている席で並んで食べると休憩室へ行き、紅茶を入れる。
あとから来たショウが隣に座ると、タッパーに詰めた料理をキラに渡す。
これは、部屋で待っているミランドの分。
鏡の精霊といっても動けばお腹が空くので、名目上、少食なキラ用として、特別に頼んで料理を詰めてもらっていた。
当然、逆パターンもある。その時はやっぱりショウが隣に座って、監視する中、食べることになる。
その後、それぞれがいつもの場所で寛いでいると、あとから入ってきたダッケンが話しはじめる。
「今夜のお披露目パーティのスケジュールだ。一通り目を通してくれ」A4版の紙を一人ずつ渡していくと「ワリッキー。急だが、クラッカーと入れ替えで、彼らの護衛に付いてくれ」
「マジで!」満面の笑みで聞き返すと「わりいな、パフィオ」してやったりという顔を向け、スケジュールの内容に目を通しはじめる。
「俺たち護衛チームは、お披露目開始時間の午後八時十五分前に特別室の扉前に集合。そこからお宝を護衛して会場のメインホールへ誘導する。パフィオたちは、午後七時にメインエントランスで会長と客たちの出迎え。その後、ダイニングルームへ誘導し、ドア前で見張りか」
「よお、ちっこいの。俺と代わってくれよ。お前はお宝に興味ねえんだろう?」パフィオが不満顔で絡んでくるので「僕に言わないでダッケンに言えよ」
「言えたらお前に言わねえよ」
「ダメだ!」ダッケンの一言で終了。
「チェッ!」舌打ちするパフィオは紙を丸めるとポケットに突っこみ、休憩室から出ていくと、無口なクラッカーが何も言わずに出ていこうとするので「クラッカー。打ち合わせは午後六時だから、遅れるな」ダッケンが後ろ姿に声を掛けると、彼は左手を上げて出ていく。




