30-1 進行具合の確認
午後十一時。
キラの部屋に、ショウとミランドが顔を揃えていた。
今回は先に部屋へ戻っていたキラがお茶を用意し、ショウたちが戻ってきて向かいのソファに座ると、それぞれカップを渡す。
「こっちの準備は完了だ。ミランド、どんな感じだったか教えてくれ」
ショウが熱い紅茶を飲むので(なんであんな熱いものが飲めるんだろう?)向かいキラがショウを凝視していると「作戦どおりに、お茶係のメイドと話を付けて交代した」とミランドが話しだす。
「交代したメイドの姿に変装して、定刻に彼らが幽閉されてる特別室に行って、作戦が書いてあるメモと、大地の気を格納したドングリを、ティーセットをテーブルに置いたときに乗せてきた」
「怪しまれなかったか?」
「もちろん」
「そうか」
「大丈夫そうだね。お疲れ様でした」飲みやすくなった紅茶を飲むキラ。
「そうだ。情報を一つ」ミランドが付けたす。「特別室の中に、お披露目パーティ用の彼らの服が、すでに用意されてた」
「そうなんだ。きっと、いつでもお披露目ができるように用意されてるんだね。さて、チーガスたちはどう動くかな?」キラがショウを見ると「もちろん、鏡だけを盗むだろう。彼らには手は出さない」
「なんでそんな事がわかるんだよ」
「奴らは狩り人ではなく、掏り人のプロだからだ」
「彼らを盗むためのノウハウを持ってないから、手を出さないということだね?」確認するミランドに「そうだ」頷く。
「そういえば、チーガスたちの計画実行の日がいつかわかった?」キラが確認すると「明晩のお披露目パーティのときだ。お前に鏡の部屋の鍵を持たせて犯人に仕立てあげ、トンズラする予定らしい」
「僕に罪を擦り付けようとしてんの!」
「シッ! 誰かに聞こえたらどうするんだ!」小声でショウが注意すると、口を尖らせ「……ゴメン。つい……」
「こっちの手配は完了してるから、お前が捕まることはない」
「……わかった」
「奴らは、例の隠し通路から、鏡を箱に詰めて運びだし終えてる」
「じゃあ、あの部屋の鏡は全部偽物なの?」聞くミランドに「いや。奴らが盗むのは直径三十センチ以上の大型の物だけだ。それ以下は効力が小さいから、対象外らしい」
「エッ!そうなの!」キラが驚く。
「なんだ、俺がメールに添付して送ったPFSからの報告書を読んでないのか? グループにも報告が行ってると思うから、確認メールを送れと書いただろう?」
「あ……そ、そうだったね」
「……PFSの研究室が最近になって解明したんだが、プロの狩り人や掏り人が、三十センチ以下の鏡を対象外にしてるのはなぜか、理由を解明するところから研究が始まったんだ」ミランドに説明する。
「そうなんだ。でも、直径三十センチ以上の鏡はたくさんあったけど、短期間で全部入れ替えできたの?」
「ああ。入れ替えは完了してる。この計画は、チーガスが会社に来た半年以上前から進められてたようだ」
「チーガスが来る前に誰か潜り込んでたの?」
「パフィオだよ。奴が先に来てたんだ」
「そうなの? てっきりチーガスが先だと思ってた」
「でも、あの鏡のレプリカを、どうやって作ったんだろう?」考えるミランドに「簡単だ。モニターの映像を盗めばいい」
「アッ、なるほど」
「レプリカができたらパフィオ宛で送り、奴が隙を見て入れ替え、本物の鏡を梱包して配送すれば、時間はかかるが、確実に入れ替えることができる」
「でも、配達人にバレないかな?」
「配達人も仲間だったらバレないだろう?」
「確かに!」




