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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 無法大陸
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26-1 シルバーフェニックスの存在意義

 

 自分の部屋に戻ったショウは運動しやすい服装に着替えると、教えられた地下にあるジム室へ向かった。

地下へは一階の従業員食堂のキッチン横にある従業員用の階段を使うか、階段横の従業員用エレベーターで降りる。


 ショウは二階の廊下奥にある従業員用エレベーターで地下へ降りると、採用試験を受けた競技用の施設やトイレを通りすぎ、ミーティング室横を通って鏡の部屋へ通じる控え室を右へ曲がると、突き当りのジム室へ向かう。


「迷路だな。まるで、地下からの脱出ゲームみたいだ」たどり着くまでに数回立ち止まり、現在地を把握しないと、自分がどこにいるのかわからなくなる。


「案内板を出しといてくれよ。こんなところで迷子になりたくねえぞ」ジム室のドアを開けると、中はセレブ御用達のような設備が整っていた。


「すげえ。こんなジム、見たことないぞ」入り口のところで部屋全体を見回す。


 どのくらいの広さがあるのかわからないくらいの部屋に様々なトレーニングマシーンが置いてあり、ダッケンをはじめ、()(びと)のメンバーがそれぞれの場所でメニューをこなしている。


 圧倒されながらも隣接するロッカー室へいき、空いているところに荷物を入れると運動前の検査を受け、問題なしと評価を受けると準備運動をして、空いているランニングマシーンにプログラムを入力して、運動をはじめた。


 走りはじめて少しすると、隣のパフィオの様子を伺う。

 なぜランニングマシーンを選んだのか、これが理由。

 彼はイヤホンを付けて、音楽を聴きながらリズミカルに走っている。


 ショウも持ってきた携帯にイヤホンを挿して音楽を聞くフリをしつつ、盗聴器を付けた四人の動向をチェックしていた。


 チーガスの手先は隣のパフィオだが、()(びと)が彼だけとは限らない。それに、()(びと)ではなく、他の目的で潜り込んでいる可能性だってある。


 そして、その危険性を十分に把握しているであろう、この屋敷の主人であるケッドマン会長にも、実は盗聴器を仕掛けていた。

 (ちな)みに、社長であるエスメラにも付けてある。

 当然、チーガスにも仕掛ける予定だったが、掏り人のチームリーダーだけあって隙がなく、断念していた。


 この事はキラには話していない。


 実は、アルバートからキラの体調が完全に回復していないことを聞いていたため、なるべく負担を掛けないようにしているからだ。



「ショウ、実は話があるんです」

 無法大陸へ出発する前夜に、アルバートが部屋を訪ねてきていた。

 ベッド横のソファに向かい合って座り、話を続ける。


「彼女のことで、話しておかないといけないことがあるんです」と言って少し間を空け「率直に言います。体力もそうなんですが、メンタルがかなり危ない状態です」

「……そうか」


「わかってたんですか?」

「……まあな」アルバートが来るまでの出来事を話すと「そうですか。そんな事を言ってたんですか」目を伏せてため息を吐く。


「その時、初めて当事者の気持ちを聞いた。それも、一番の被害者である二十代の女性の気持ちをだ」

「……そうですか」

「壊れてたよ。当然だ」


「なぜ、僕たちの髪がシルバーなのかご存知ですか?」

「いや、なぜなんだ?」突然聞かれて戸惑うと「大地の気の色がシルバーだからです」

「……そうなのか」


「なぜ、僕たちの瞳の色がグリーンベースなのかご存知ですか?」

「いや、どうしてなんだ?」

「植物の気の色がグリーンだからです」


「なぜ同じグリーンじゃないんだ?」

「植物の種類によって色が違うからです」

「植物の種類?」

「寒い地方と暑い地方では、生息している植物の種類が違いますよね?」

「なるほど。そういう違いか」

 

「なぜ、場所によって様々な輝きを持つ僕らがいるか、ご存知ですか?」

「……申し訳ない。本当に、何も知らないんだ」

「大切に手入れをされ、愛情をもって管理されている土地にいるからです」

「ああ、そうなのか」


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