8 加入の動機
「なぜPFSに入ったの?」
「エッ? なんでだって構わないだろう?」
「それはそうだけど、言えないような理由なの?」
「……ダチの、敵を討つためだよ」
「友達の? 狩りにでも巻き込まれたの?」
「……親友だったダチの家族が、シルバーフェニックスだったんだ」
「エッ!」大声を出して慌てて口を押さえる。
隣の客が、あまりの煩さに郷を煮やして席を立つので、二人で頭を下げると、気持ちを落ち着かせるためにゆっくり紅茶を飲む。
飲み終えて一息つき「どういう経緯があったの?」声を掛けるとショウは静かに話しだした。
「ある日、俺たちが住んでた所に狩り人たちが来て、あぶり出しを始めたんだ。真夜中に突然叩き起こされて、一人ずつ例の鏡の前に立たされた。
逃げ出す者もいたけど村はすでに包囲されてて、どうにもならない状態だったんだ。
連中は正体がバレた彼らを輸送車に押し込めて連れ去った。その中にダチと奴の兄貴が含まれてたんで、俺たちはすぐにあとを追った。
幽閉先を突き止めると近くに留まり、彼らを解放するよう抗議したが、数週間後、幽閉されてた屋敷で、餓死したと……聞かされ……た……」
「……そう、そんな事があったの」
「いい奴だった。話のわかる奴だった。兄貴もいい人で、俺のことを本当にかわいがってくれた。なのにアイツらは、物のように扱って、殺したんだ」まだ話すのが辛いらしく、頭を抱える。
そして、落ち着くと「キラは、どんな理由で入ったんだ?」
「……あなたと同じよ」
「俺と? じゃあ、お前の友達もシルバーフェニックスだったのか?」
「いいえ。私の場合はちょっと違うわ」紅茶を飲むと話を続ける。
「あの日は友達と飲みに行って、その帰りだった。飲み過ぎちゃって、夜風に当たろうと公園を歩いてるときだったわ。
突然、奥の茂みから音がするので、痴漢かもしれないと構えてたら、茂みの間からスカートの裾が見えたので恐る恐る覗いてみると、シルバーフェニックスの女性がうずくまってたの」
「どこかから逃げ出してきたのか?」
「ええ。彼女は十歳くらいの女の子を抱えてたの。他の人に見付ったら大変だと思って、急いで家に連れ帰ったわ。彼女も大分弱ってたけど、女の子のほうが、体力がない分、衰弱が激しくて、手の施しようがなかった。病院に連れていけば助かったのかもしれないけど、そんなことできないし。次の日、一度も意識が戻らずに、亡くなったわ」
「なんてこった」ため息を吐いて再び頭を抱える。
「残った彼女は、体力が回復するまで家に匿ってあげたの。でも、もう少し早く逃げだせたらと、ずいぶん落ち込んでたわ」
「……そうだったのか」
「彼女や、亡くなった女の子の痩せ細った姿を見て、このままじゃいけないと思ったの」
「俺たち、動機は同じなんだな」
「……そう、ね」
「今回の計画、俺も混ぜてくれ」
「……ええ」
このあと計画の内容を話し、終わると「携帯の番号を教えてくれ」
番号を教えあうと「俺は、本部に戻って探りを入れる」
「私はメンバーから情報を集めるわ」
「何かあったらメールをくれ。俺も、新しい情報を掴んだら連絡する」
「わかった」
レジで会計を済ませると、店の前で別れた。




