24 潜り込んでいる手先の正体
その二人とは、チーガスとロンゲ茶髪のパフィオ。
チーガスの手先はパフィオだった。
「誰にも気付かれてないな?」
「ああ。心配するなよ。大丈夫だ」
「それで、例の二人はどんな感じだ?」
「ちっこいほうは大したことねえな。採用試験で最短記録を出したとしても、ヒョロヒョロで、どうして会長が採用したのか理解できねえが、でかいほうはソコソコできそうだ。あのワリッキーが気に入ってる」
「ああ、奴は侮るな。この前、私に探りを入れてきた。何か気付いてるのかもしれない」
「他の組織の掏り人かもしれねえのか?」
「それはわからないが、少し危険な匂いがする」
「あんたの鼻はよく利くからな。注意するよ」
「そうしてくれ。決行日は変更ない。そのまま進めてくれ。何か動きがあったら連絡をくれ」
「わかった。じゃあ、次の定時連絡で」
ここで会話が途切れた。
「奴が手下だったとは意外だったな」
「やっぱりショウに目を付けてきたね」イヤホンを返すと「そうなるように、ワザと声を掛けたからな」
「僕はヒョロヒョロだから」
「そう見せかけて、お前が動きやすいように、奴らの目が俺に向くようにしてるんじゃないか」
「まあね。でも、作戦決行日がいつか分からなかった」飲みかけのカップを取って一口飲むと「しかし、そんな先ではないだろう。きっとここ数日だ」テーブルの端に置いてあるティーセットのトレーからカップを取り、ティーポットから紅茶を入れる。
「定期連絡するって言ってたから、次の連絡時にわかりそうだね」
「その情報で、この先どう動くか決まる」
「それまでに、こっちの準備を終わらせておかないといけないよ」
「まずは幽閉されてる彼らを動けるようにすることだが、どうするんだ?」
「それは今夜でカバーできる」
「そういえば、どうやって彼らの体力を上げるんだ?」
「前に僕が体力を戻した方法を使うんだよ」
「お前が体力を戻した方法?」
「この大陸に来る前、森を統べるモミの木の長老から大地の気のエネルギーをもらっただろう?」
「ああ! しかし、どこの森からどうやってエネルギーをもらい、渡すんだ?」
「ケッドマン社長の屋敷にきてミランドと代わったとき、前庭奥の森に隠れてただろう? その時、森の精霊たちから気のエネルギーをもらってたんだ」そう言って、ポケットから木の実を取りだす。
「……ドングリだろう?」
「これに気のエネルギーを凝縮して、入れてあるんだよ」
「……どうやって入れるんだ? それより足りるのか? 彼らは十名以上いるんだぞ」
「植物の力を侮ったらダメだよ。木の実は、内側に大量のエネルギーを貯めることができるんだ」
「……だから、どうやって」
「ショウには理解できないよ」
「ああ、できない」
「まあ、いいから」ポケットにしまうと「副作用の心配があるけど、これで体力を一時的に戻せるから、あとは、ショウがあの部屋の監視カメラの映像を細工してくれれば、こっちの準備は完了。残りは鏡の部屋だよ。電子キーのコピーは作ったけど、どうする?」
「それは、チーガスたちがどう出るかによるな。きっと、パフィオが何かしらの細工をしてるだろう。奴はバイク乗りで、自分で整備してる。機械いじりが得意そうだからな」
「なんでそんな事がわかるんだ?」
「奴に盗聴器を仕掛けるとき、キーホルダーに、大型バイクのキーと、有名な工具屋のミニチュアレンチが付いてた。あんなものを付けてる奴は、修理工場にいる奴か、自分で整備するマニアしかいない」
「ヘェ、そうなんだ」興味のある顔をして紅茶を飲むので「少し元気が出てきたみたいだな」
「計画が進展してるからね」
「……そうか」




