7-3 情報交換
「人のこと言えないだろう」
「誰かさんのが移っちゃったのよ」
「……悪かったな」
「で、どこの支局が襲われてるの?」
「保護施設があるところだ」
「なるほどね」頷くと「私たちが助けだした彼らは、調べたところ、全員が支局から連れ去られてたわ。上手い手を考えたものね。支局が襲撃されたことにして裏取引してたのよ」
「事が事だけに警察に届けるわけにいかないからバレることはない。それを繰り返して大金をせしめてるのか」
「そうよ」
「リサイクル商品のように彼らを回してるのか」
「多額のお金も一緒に回ってるわ」
「そうだな。もしこの話が本当ならば、どこかに記録が残ってるはずだ」
「そうね」
「でも、本当にそんな事してるんだとしたら、許せねえな」
「フウン、結構まともな考えしてるのね」
「それ、どういう意味だ?」
「ただのロリコンだと思ってたから」
「お前なあ」
その時、注文を取りにきたウエイターが来たので、話は中断した。
彼は紅茶を置くと自分の名刺をキラに渡し「お電話、お待ちしています」彼自慢と思われる色目を使って戻っていく。
「何だアイツ。俺がいるのに大胆なことして」
「あら、彼、なかなかじゃない」受け取った名刺を見るので「電話するのか?」
「それは私の勝手でしょう?」名刺をバッグにしまう。
(チェッ、口では勝てねえな)思いっきり不機嫌な顔をすると「ところで、なんでエレナとアンジュの所にいたの?」と聞いてくる。
「タレコミがあったんだよ。その会社を細かく調べろ。きっと何か出てくるからってさ」
「誰かわからなかったの?」
「用件だけ言って切っちまったからな。中年らしい男だとしかわからない」
「それで?」
「早速調べたら、最近、多額の支払いをしてたんだ。支払い先はDR」
「DR? 聞いたことないわ」
「だろうな。ここ最近出てきた名前だ」
「もしかしたら、裏取引で使われてるコードネームだったりして」
「じゃあ、PFSの裏の顔がDRだと言うのか?」
「そう考えると、辻褄が合ってこない?」
「タレコミしてきたのは、その事に耐えられなくなった内部の者」
「きっと当たってるわよ」
考え込むショウに「監禁してた連中は、なんであんたをエレナたちの隣に閉じ込めたの? 普通、彼らは一般人と同じ場所に監禁されないはずよ」
「まあ、運が良かったというべきだな。たまたま空いてる牢が隣だったんだよ」
「ウソ」
「そんなこと言われても、連れてかれたところが隣だったんだから、しょうがねえだろう」
「……まさか、その顔のままで潜り込んだんじゃないでしょうね?」
「そんなアホなことするかよ。最低限の変装はしてったよ。向こうに面が割れたら動き辛くなるからな」
「あら、私が会ったときはその顔だったじゃないの」
「長時間、暑苦しい変装をしたままでいたくなかったんだよ」
「二回とも?」
「そうだよ。見張りがくる時間はちゃんと変装してた」
「じゃあ、これからはもう少し根性つけて、終わるまで変装してられるようにするのね。私みたいな不意の来客のとき、対応できないでしょう?」
「ハイハイ、わかりました」
「まあ、これで、どうしてあんたがアルドのパーティに来るのかわかったわ。あそこもPFSの支局だもの。しかも、彼らの保護施設がある。どうやら、この地域で残った支局はあそこだけのようね」
「まあな。それより、俺のことあんたって呼ぶの、やめてくれない?」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「ショウでいいよ」
「ロリコンのほうが合ってると思うけど」
「もう一回言ったら怒るぞ」今度はショウが握り拳を作る。
「まあ恐い」
「それにしても、なんでお前……キラも来るんだ?」
「さっき言った裏取引のことを調べてたら、アルドの名前が出てきたのよ。そして、今回のパーティに便乗して、保護してる彼らをどこかへ運ぼうとしてるらしいともね」
「なんだって? そんな報告来てないぞ」
「怪しいでしょう? この事はPFS本部も知らないのよ。絶対、彼は裏取引に関係してるわ。だから、潜り込む計画を立ててるの。何が何でも尻尾を掴んでやるわ」
「その計画、俺も混ぜてくれ」
「やめといたら? もしかしたら、PFSが潰れることになるかもしれないのよ」
「そんな事してるんだったら、潰れたほうがマシだ」




