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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 無法大陸
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19-1 採用試験

 

 お昼を済ませて休憩を取ると、不愛想な執事に試験会場へ連れていかれた。

 そこは屋敷の裏側にある室内競技場のようなところで、障害物競走でも始めるみたいに様々なものが置いてある。


「中世風の屋敷からは想像できない近代的な設備だな」ショウが中を見回すと「金持ちあるあるの一つじゃん」隣で同じように目の前に置かれている障害物を見るキラに「確かにな」頷く。


”さて、これからいくつか試験を受けてもらうが、体調はどうかね?” 二階のブースからサルフテッドがマイクを通して声を掛けてくるので「まあまあです」ショウが答えると “そうか。それでは、早速始めるとしよう。はじめに見本を見せるから、続けて同じことをやってくれ”


 すると、身長が二メートル近くある格闘技をしているだろう体格の、三十代くらいの男が反対側の入り口から入ってきて、スタートラインに立つと、合図の音とともに、用意されている障害物をクリアしてゴールする。


“さあ、君たちの番だ。順番は任せる”


「何を確認したいのかよくわからないけど、タイムを見るみたいだね」隣のショウに声を掛けると「僕が先にいく」スタートラインに付いて合図とともに走りだす。


 難なく障害物をクリアしてゴールすると “これはすごい! 新記録だ! 素晴らしい!” サルフテッドの興奮した声が聞こえてくる。


「チェッ、負けてらんねえな」続いてショウがスタートラインに立ち、合図とともに走りだしてゴールすると “ おいおい、本当か? コンマ差でビー君には及ばないが、これもすごい記録だぞ ”


「クソッ、マジかよ!」(くや)しがるショウに「もう少し練習すれば早くなるよ」キラが憎まれ口をたたくと「余計なお世話だ!」口をとがらせて反論する。


“二人とも合格だ。これから見本を見せた男が仕事の説明をするから、以後、彼の指示に従ってくれ”


 すると、先ほどの男が近寄ってきて「ダッケンだ。よろしく。それにしても君たちには驚いたな。今まで私が一番早くクリアしたのに、いきなり二人に追い越されるとは思わなかったよ」


「これくらいの障害物、いつも似たようなところを通ってたから、簡単だったよ」キラがサラッと言うとダッケンは驚き「そうか。それは頼もしいな。では仕事の説明をするから、隣の部屋へ来てくれ」




「ここに、さっき君たちにやってもらった試験の結果がある」

 ミーティングルームで講義を受けるような形で向かい合う。


「素晴らしい記録だ。特にビー君はすごい反射神経を持ってる」

「そうですか?」あっけらかんと言い返すので「俺の立場が全然ねえ」隣の席でボヤくショウ。

「いや、ビー君が並外れてるんだよ。君も大したものだ。私より反射神経がいいんだからな」

「一人でも上にいると、嬉しくないですね」

(きた)えてやろうか?」キラがニッと笑うので「断る!」即答するショウ。


「私が一番立場がないよ。教える立場にいながら、能力は二人のほうが上なんだからな」

「世の中広いですから、気にしないでください」キラが(なぐさ)めるように言うのでダッケンはまた驚き「大いに気にするよ。その細い体のどこにあれだけのエネルギーがあるのか、教えてほしい」


「内緒です」

「ハハハッ! 内緒か、それは残念だ」


「あれだけのことで、いろんな分析が出るんですか?」不思議に思うショウに「データを取るために組まれたものだからね。かなり細かく出るよ」

 その後、診断結果を読み終えると「君たちは即戦力になる。早速現場に出てもらうが、いいね?」


「うーん、少し不安がありますね。どういう状況なのかわからないから」キラが考え込むと「私が付いてるから心配ない。それに、どんな状況でも、君たちの判断能力をもってすれば大丈夫だ」


「最初からそんなに(ほめ)められると、あとが怖いな」ショウがおどけると「私としては、叱ることを作ってくれたほうが、立場上、面目が立つんだがね」

「では、時々ドジを踏みましょうか?」真剣に言うキラに「そんなことを言われるとは思わなかったな」面食らうダッケン。


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