16-2 代役
来たときに案内された応接室には、ケッドマン社長と身なりを整えた七十代と思われる紳士がソファに座っていて、ショウたちが入ってくると立ち上がり「お待たせして申し訳ございません」と声を掛けてくる。
『ゆっくりさせていただいてましたから』ミランドが答えると「紹介いたしますわ。父のサルフテッドです」
「エスメラを助けてくれてありがとう」二人に握手を求めてくるので「当然のことをしたまでですから」ショウが握手に応える。
「さあ、お掛けになって」ケッドマン社長が向かいのソファを勧め、二人が座ると「今夜はパーティを開きますの。その席で改めてお礼をさせていただきますわ」
「いえ。そこまでしていただかなくても」突然の話にショウが躊躇すると『本当に、当たり前のことをしただけですから』ミランドも断るが「とんでもありませんわ。わたくしの命の恩人ですもの、そのくらいはさせていただかないと失礼ですわ」
『でも、僕はパーティなんて出たことないから』本当に出たことがないので戸惑うミランドに「普通になさっててください。特別なことはないのですからね」
『はあ、そうでしょうか』
「ところで、君たちはあの鏡を見たかね?」」サフルテッドが壁に掛かっている例の鏡を指すので「はい、拝見させていただきました」先にショウが返事をすると『僕はまだ見てないです』とミランドが言うのでサルフテッドは席を立ち、鏡のところへ行くと「私が一番大切にしている鏡だ」
『そうなんですか』ミランドは鏡の近くまでいき『ワァ、見事な彫刻ですね』
驚く顔に満足したのか、鏡の説明を始める。
「君はダークルーラと呼ばれる鏡を知ってるかね?」
『はい。聞いたことがあります』
「では、何に使うものか知ってるかね?」
『シルバーフェニックスを捕まえるときに使うものです』
「そうだ。これがそのダークルーラだ」
『これが! 本当ですか? では、あなたはシルバーフェニックスをお持ちなんですね!』
「そうだ」
『すごいなあ。シルバーフェニックスを持ってるということは、すごいことなんですよね?』
「もちろんだ。ステイタスシンボルだからね」
『あ、すると、兄の手紙に書いてあった狩りというのは、もしかして、シルバーフェニックス狩りのことなのかもしれない』
「君のお兄さんはとても身が軽いそうだが、君もそうなのかね?」
『はい。小さい頃、よく野山を駆け回ってました』
「そうか。どうだ? ここで金を稼いでみないか?」
『ここでですか?』
「娘に聞いたんだが、今までお兄さんの仕送りで生計を立てていたそうだね」
『……はい』
「そのお兄さんがどうやらペラノイオに来てて、狩りの手伝いをしてると言ってきたそうだが」
『はい、そうです』
「娘からお兄さんの名前を聞いて調べさせたんだが、記録されていなかったよ」
『わざわざ調べてくれたんですか? ありがとうございます!』
「いや、見付けられなくて申し訳ないよ」
『そんなことありません』
「そこで、お兄さんの消息がわからない今、君がお金を稼いで、仕送りしながらお兄さんの行方を探したらどうかね?」
『僕がですか!』
「俺も一緒にいいですか?」ショウが口を挟むと「もちろんだ」笑顔で答える。
『持ってきたお金もそろそろ底をつきそうだし、置いてきた両親のことも気になるから……でも、僕で勤まるでしょうか』ミランドが不安そうに聞くと「とりあえず明日、試験を受けくれたまえ」
『試験、ですか?』
「深く考えなくていい。君たちなら簡単にパスするだろう」
「お兄様が見つかるまで、わたくしたちがあなた方の身の回りのお世話をさせていただきますわ」
『いえ! そこまでご迷惑を掛けられません』
「お手伝いさせていただく約束ですわ」
『でも……』
「遠慮なさらないで。これはわたくしの恩返しですもの」
『そこまで甘えていいんでしょうか?』
「もちろんですわ」
ミランドがショウを見ると頷くので『ありがとうございます。僕、一生懸命働きます』
「これで決まりだな。試験は私の屋敷で行うから、今日はゆっくりしてくれたまえ。明日、迎えの車を寄越す」
『会長のお屋敷に行くんですか!』ミランドが驚くと「私の屋敷に試験をするための設備があるからね」
『そうなんですか。きっと素敵なお屋敷なんでしょうね』
「試験をパスしたら、好待遇で迎えるよ」
『ありがとうございます! 試験、頑張ります!』




