8 出港
翌日の午前十時。
キラたちは赤ら顔の社長とササドと一緒に社長専用車で港へいき、船着き場に着くと、一際目立つコバルトブルーの船の前でケッドマン社長と秘書が二人を迎えてくれた。
「ようこそ。お待ちしてましたわ」
「お招きいただいて光栄です」答えるショウとキラは、会社が用意してくれた例のスーツを着ている。
(男物のスーツを着るとは思わなかった)内心複雑な思いをしつつ笑顔を作る。
「お世話になりました」向き直って赤ら顔の社長とササドに挨拶すると「帰りを待ってるよ」と社長。
「気を付けてな」とササド。
「では」
手を振る二人に応えながら、パラダイス号と書かれた船に乗りこむ。
船内に入ると、やはり桁違いの金持ちとわかる豪華さ。
「すげえな」呆気に取られるショウ。
「すごすぎ」三百六十度見回すキラ。
二人は階段を上がって二階へ連れていかれると「あなた方のお部屋はここよ」社長自ら部屋へ案内する。
その部屋は、中央に螺旋階段が設置されていて、豪華な装飾が施されていた。
「この部屋を使っていいんですか!」目を丸くするキラに「もちろんですわ。あなた方はわたくしたちの命の恩人ですもの、遠慮なさらないで」今度は部屋の中を案内してくれる。
一階は二十畳はあるだろうと思われるリビングルームになっていて二階には二部屋あり、バスルーム、トイレなどがそれぞれ備え付けてある。
「まるで一流ホテルのスイートルームみたいですね」目を輝かせるキラに「気に入っていただけたかしら?」
「もちろんです!」
そのあと一階へ戻ると「何か必要なものがありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
「着くまでゆっくりなさってて」
「はい」
「では、のち程」社長は笑顔で部屋から出ていく。
社長たちを見送るとキラが鞄から小さな機器を取り出すので「それは何だ?」
「シッ!」機器のスイッチを入れる。
ピピピピピピッ、
「大丈夫だな」
「何してんだよ」
「この部屋に盗聴器類が仕掛けられてないか調べたんだよ」
「そんなもの仕掛けてどうすんだよ。俺たちは招待されたんだぞ。その俺たちから何を聞きだすっていうんだ?」
「念のためだよ。油断は禁物だろう?」
「そりゃそうだけど」
「隠しカメラもないようだし」
「細かいな」
「どんな時でも、チェックは怠らない」
「そんなものを持ってながら、なんで俺が付けた盗聴器類を見付けられなかったんだ?」と聞くとキラの動きが止まるので「なるほど、あの後に揃えたのか」
「フン!」機器のスイッチを切って鞄にしまう。
「そろそろ出港の時間だ。デッキに出てみないか?」腕時計を見るショウがデッキに繋がる窓を開ける。
螺旋階段の正面にある窓からデッキへ出ると、太陽がまぶしくて目を細める。
「今日もいい天気だね」手をかざして太陽の光を遮ると「地震の後遺症はないみたいだな」前方で荷物の積み込みをしている大型船を見る。
その時、エンジン音が聞こえてきて、パラダイス号が動きはじめた。
ペラノイオへは翌日着く。
パラダイス号は堤防を抜けて外海へ出ていく。




