7-1 情報交換
カランカランカラン。
「さあどうぞ。お気に召してもらえるかな?」
中世風の洒落たお店のドアを開け、ナイト気取りで招き入れる。
「ヘェ、さすが女たらし。いい店知ってるわね」
「それ、誉めてんの? けなしてんの?」
「どっちに取ってもいいわよ」
「そう言われると、いいほうに取れないぞ」ヤレヤレと肩を落とす。
キラが中に入ると店内がざわつき、客の視線が彼女に向けられる。
(確かに目立つよな。見てるぶんにはいい女なんだけど)
当の本人は、ざわめきの原因が自分だと気付いているのかいないのか、案内待ちの顔をして立っている。
そして、席に案内されている間も、周りの視線は彼女に向けられていた。
(モデルかタレントだとでも思われてんのかな?)
エスコート役のショウは恋人と思われているかもしれないと、少し自慢げだった。
(暴力がなきゃね)
奥のテーブルに案内され、席に座るとウエイターがメニューを持ってきたが、彼も顔付きが違っていた。
しかし、キラはまったく気付いていない。
メニューを受け取り「この店のお勧めは?」とショウに聞く。
「ここは紅茶専門店だから、本日のお勧めに載ってるよ」
「ああ、これね。じゃあ、ニルギリにするわ」
「かしこまりました!」妙に張り切った声でウエイターが答える。
(暴力を直すことは後にして、まずは言葉遣いだな)
考え込んでいるショウに「注文しないの? 彼、困ってるわよ」
「エッ? ああ、俺はアールグレイをホットのストレートで」
「かしこまりました」心なしか、ウエイターの視線がきつい。
(おいおい、俺は客だぞ。露骨に嫌な顔向けていいのかよ)
ムッとするとウエイターは視線を外した。
「で、あんたの目的は何なの?」ウエイターの後ろ姿を睨んでいるショウに声を掛けると「それより、アンジュをどこへ連れてったんだよ」
「なんでそんなこと聞くのよ。私のこと調べたんでしょう?」
「当然。でも、まさか、同じPFSにいたとは思わなかった」
シルバーフェニックス保護団体PFS(Protection for Silver Phoenix)
彼らの救出活動を行うとともに、彼らの人権を認めるよう、各国政府に働き掛けている全世界に支部がある巨大保護団体。
「それはお互い様よ。私だって驚いたわ。でも、なんで情報部の人間が動き回ってるの?」
「それより、なんで救出チームがエレナとアンジュがいた場所を知ってたんだよ。あの会社はノーマークだったんだぞ」
「ノーマークだった会社に、どうして情報部員が潜り込んでるのよ」
「エレナたちをどこへ連れてったんだよ。救出チームのくせに、PFSの保護施設に連れてってないだろう」
「フゥ、質問の言い合いね」ため息を吐くと「いいわ。私から答える。エレナたちがいた場所を知ってたのは、上から極秘で指令が来たからよ。一名助けたら五百万出すって報酬付きでね」
「五百万!」
「シッ!」
大声に驚いてこっちを見ている隣の客に、軽く会釈して謝る。




