3-2 潜入開始 困難
通路に出ると他の部屋から出てきた人達のあとに付いて食堂へ向かい、中に入ると、男女が入り混じって朝食を取っている光景が目に入ってきた。
「女性もいるんだ」
同じ制服を着ているので、事務員なのだろう。
「驚き。昨日、船の中で見た連中がスーツ着てるよ」キラが奥に固まって座っているスーツ軍団を見ると「あんな汚い格好じゃあ、この建物に似合わないからな」中を見回すショウ。
「あの飲んだくれ社長も結構やるじゃん」
「人は見掛けに寄らないってか」
列に並んで朝食を受け取り、空いている部屋の中央の長テーブルに並んで座ると「あら、見かけない顔ね」ショウの右隣に座っている女性グループの一人が声を掛けてきた。
「昨日入ったばかりなんだ」ショウが答えると「社員として? それとも契約? 名前は? 年はいくつ? 趣味は何? 彼女いるの?」
ショウに向かって矢継ぎ早の質問攻撃。
面食らっていると「彼らは臨時のバイトだよ。背が高いほうがショウ君で、隣がビー君だ」
女性たちの向かいに座っている、ブランド物のスーツを着た管理職と思われる中年の男性が口を挟んでくるので「なんで僕たちの名前を知ってるんですか?」キラが不思議そうに聞くと「何言ってるんだ。昨日案内したじゃないか」
「昨日案内してくれたのは無精髭の……エッ!」
その無精髭をきれいに剃り、ボサボサの髪をきれいにセットしているのでわかるはずがない。
「ヒエエ! 別人だ!」
「課長、昨日はこういう格好じゃなかったの?」驚く女性社員に「課長?」こちらも驚く。
「そういえば、私のことは何も言ってなかったね」
「口調が違うぞ!」気味悪そうな顔をするショウ。
「こういう話し方じゃなかったの?」すかさず聞く女性社員たちにわかるように「ダメだよ。昨日のことは内緒だ」と冗談めかして言うので「はあ……」どういう性格してるんだ? と困惑してしまう。
「ねえねえ、昨日の課長ってどんな感じだったの?」興味津々の女性社員たちに「こらこら君たち、仕事の話なんだから、聞いてはダメだよ」
「エーッ」こういう文句はなぜか揃う。
「ほら、もうすく朝礼の時間だ。早くいかないと遅れてしまうよ」
「いっけない。こんな時間だわ」慌てて席を立つと、ショウの隣に座っていた女性が彼の肩をポンと叩き「ツバ付けた」と言うので「アーッ! ずるい! 私も!」次々と肩を叩き「またね」と言って食堂から出ていく。
「モテる男は大変だな。ツバがいくつ付いたか覚えてるか?」キラが意地悪く聞くと「やきもち焼くなよ」
「誰が焼くか!」
「昨日はすまなかったね。私は運輸科の課長でササドと言うんだ。ここでは、女性社員に嫌われると会社にいられなくなるんだよ」
「ヘェ、そうなんですか」意外な事を聞いて驚くショウ。
「あんな社長だが女性には優しくてね。どうしても向うの肩を持ってしまうんだ」
「今時珍しいですね」感心するキラ。
「だから、この会社に入るにはすごい倍率なんだよ」
「でしょうね」
「それにつられて、男も入ってくるか」
「そのことも事実だ。しかし、男性の受け持つ仕事は結構きついからね。一年後には半分くらいになってるよ」
「だらしないなぁ。何のために入ったのかわからないじゃないか。頑張ってこその男だろう」
「お前が言うな」
「言っちゃ悪い?」
「悪い!」即答するとササドが「とはいえ、残ればそれなりの手当てが支給されるからね」と言うので「報酬が出るんですか?」キラが、ヘェ、という顔をすると「アメとムチだよ」
「それでこそやりがいがあるというものですよ」
「新入社員のころは、みんなそう言うよ」
「ショウ、ここで一年働いてみろよ」
「根性見てやろうじゃねえかって言うんだろう?」
「そのとおり! わかってるじゃん!」
「やなこった」
「さあ、食事が終わったら社内を案内しよう」




