20 気の性質の違い
二時間後、リビングへ案内すると、ショウがお茶を飲みながら本を読んでいた。
「お久しぶりです」
「エッ? あれ? もしかして……アルバート?」
「先日は、危ないところを助けていただいて、ありがとうございました」
「驚いたな。誰かと思った。人間の姿になるとやっぱり雰囲気が違うな。でも、元気そうでよかった。他の人達はどうしてる?」
「みんな元気です。会ったらお礼を言っといてくれと言われました」
「そうか。ああ、荷物は部屋へ運んどいたから。座って」
「はい」ショウの向かいに座るとキラがお茶を持ってきて、テーブルにカップを置くと「次の任務のデータをもらったから、確認してくるわ」と言ってUSBを見せると、部屋から出ていく。
「もしかして、アルバートが代わりのメンバーなのか?」
「はい。僕は治癒再生能力を持ってるんですよ。ですから、救出された仲間のケアとか、負傷したメンバーのケアが仕事になります」
「では、君がここに来たのは」
「彼女のケアに来ました。ダークルーラに捕まったと連絡がありましたので」
「ああ。相当ひどくやられたよ」
「報告書を読みました。本当はもっと早く来なければならなかったんですが、あいにく対応できるメンバーが出払ってて、急きょ、僕に指名が来たんです」
「そうか。ケアはどのくらい掛かりそうだ?」
「そうですね。かなり無理してるようなので、しばらく掛かりそうです」
「以前と比べて、かなり痩せたよ」
「彼女はここで、大地の精霊から気を貰ったんですよね?」
「ああ。お陰で元の姿に戻ることができるようになった。体力も回復してると思う」
「そうとは限らないんですよ。土地によって気の質が違いますから」
「気の質が違う?」
「気も土地によって性質が違うんです。運よく体質に合えばいいんですが、もし合わなかったら反動が来るんです」
「どんな反動が来るんだ?」
「そうですね、こういえば理解してもらえるでしょう。土地や国によって食べ物が違いますよね。あなたもいろんな国へ行ってるからわかると思いますが、食の違いに驚かれたことがあるでしょう? 口に合う物や合わない物がありませんでしたか?」
「ああ、経験がある」
「普通なら口に合うものを探しますが、動けないときはどうしますか?」
「動けないとき?」
「疲れ切ってるときや空腹のときは、食べられるものだったら、どんなに口に合わなくても食べてしまうでしょう?」
「……そうだな」
「しかし、問題はその後です。どうしても体質に合わなかったら反動がきます。例えば、お腹をこわしたり湿疹や発作を起こしたり。時には、熱を出して寝込んでしまうことがありますよね?」
「確かに」
「それと一緒です」
「じゃあ、もしかしたら」
「彼女もこの事は知ってるので、体質に合わないとわかれば対応するでしょう」
「そうか。では、どこの気だったら一番いいんだ?」
「食べ物も、自分が住んでる所のものが一番でしょう?」
「なら、王国に帰ればすぐに回復するんじゃないか」
「僕たちの王国があることを知ってるんですか!」
「ああ、知ってる」
「彼女が話したんですか?」
「いや。前に裏情報で、それらしい噂が流れたことがあるんだ」
「……ああ、あの事件ですね……」
「知ってるのか?」
「もちろんです。僕たちの仲間が連れ去られたんですから」
「……そうだな」
しばらく沈黙が続くが「話を元に戻すが、なぜ王国へ帰さないんだ?」
「……今は、王国に戻ることが許されてないんです」
「そこが解らない。なぜ?」
「話に出たあの事件が原因です。あれ以降、特例以外は王国へ戻ることを禁止したんです」
「……そうなのか」
「だから、僕のような者がいるんです」




