18 キッカケのお礼
翌朝。
朝食の後片付けをしているときに、キャンベラ夫人が訪ねてきた。
「まあキラさん! 起き上がって大丈夫なの!」
「ええ。もうすっかり良くなりました」
「そう、それはよかったわ」
「ご心配をお掛けしました」
「いいのよ。お元気になられて本当に良かったわ」
「あとでお茶を飲みにいらっしゃいませんか? 心配をお掛けしたお詫びに、手製のケーキをご馳走します」
「まあ、ありがとう。ぜひ伺うわ」
「お待ちしてます」
夫人を見送り、キッチンへ戻ると「手伝おうか?」ショウが声を掛けてくるので「じゃあ、棚にあるケーキミックスの粉を持ってきて」後ろの棚を指す。
道具を揃えていると「ラルか」
「エッ?」
「キラよりラルのほうがいい」
「説明したでしょう?」
「ラルのほうが呼びやすい」
「ダメよ」
粉を計り、混ぜていると「両親は、何をしてるんだ?」
「国で、再建の手伝いをしてると思うわ」型の準備をしながら答える。
「兄弟はいるのか?」
「いいえ」
「じゃあ、心配してるだろう。連絡はしてるのか?」
「……いいえ」
「出てからずっと?」
「ええ……一度も」
「会いたいだろう?」
「……ええ」
「早く戻れるよう、俺も頑張るよ」
「……ありがとう」
「ところで、体調は本当に大丈夫か?」
「今のところは」
「そうか。万全じゃないなら、無理するなよ」
「……気を付けるわ」
午後三時になって、キャンベラ夫人が訪ねてきた。
「元気になったお祝いよ」また大きな花束を差し出すので「ありがとうございます。さあ、どうぞ」一階のリビングへ案内する。
「ようこそ」ショウが部屋へ入ってくると「お花をいただいたの」
「きれいだな。気遣っていただいてありがとうございます。これは預かるよ。夫人のお相手をして」花束を受け取ると部屋から出ていく。
夫人はソファに座ると「それにしても、一日でこんなにお元気になられるなんて」不思議そうな顔をするので「主治医にもらった薬を持ってたので」答えながら紅茶を入れる。
「そうだったの。余計なことをしてしまったかしら?」
「いいえ。気遣ってくださって嬉しいです。都会では人間関係がギスギスしてて、他人に干渉しないんですよ」
「そうなの。寂しいわね」
「さあ、どうぞ」紅茶とケーキが乗ったお皿をテーブルに置く。
その後、夫人は一時間ほどいると帰っていった。




