16-1 精霊がいる場所
「ウワッ!」驚いて後ずさるショウに「彼女たちはフロス アクアエ。水の精霊よ」
「なに? 水の精霊?」理解できず、驚きの目で彼女たちを見る。
「なんで笑ったの?」キラが理由を聞くと『だって、ラルの言うとおりに動くんですもの。それがおかしくって』
「ラル?」聞きとめるショウ。
「シッ!」慌てるキラ。
『いっけなーい!』焦るフロス アクアエ。
「ラルってどういうことだ?」
「なんで余計なこと言うの!」
『ごめんなさい!』
「おい、どういうことだ?」キラを見ると、ヤバい、という顔をして俯く。
「おい」
「……あとで、説明する」
「……わかった」
「また、森へ行ってと言っても、聞いてくれないでしょうね」
「このままのほうがいいね」
「じゃあ、ちょっと後ろに下がってて」
言われたとおり後ろに下がると、キラはしがみついているモミの木の大木に声を掛けはじめる。
「大いなる大地に鎮座する、この地を治める神木に宿りし精霊よ。その偉大なる力を我れに」
言い終ると大木が光りだし、淡い光がキラの身体を包み込んでいく。
何分経っただろう。フッと光が消えるとキラが立ち上がり「フウ」と息を吐く。
「立ち上がったりして平気なのか?」目を丸くショウ。
「とりあえず大丈夫よ」額のチップを取って髪を掻き上げると銀髪がブラウンに戻り、瞳の色も元のブルーグレーになる。
「一体、どうなってんだ?」困惑するショウを見てフロス アクアエたちがクスクス笑い『初めて見たら驚くわね』と言うので「ああ、驚いたよ」
「あなたたちが笑ったからややこしくなったのよ」
『……ごめんなさい』バツが悪そうな顔をして謝る。
「精霊は、本当にいるのか」
「私たちは、自然界と人間界のバランスを保つ役目を持ってるのよ。そのため、どちらにも適応できる能力を持ってるの」
「だから、そうやって変われる」
「ええ。そのため、私たちがいる所は、自然が失われることなく維持されるのよ」
「反対に、いなくなった所はそのバランスを失い、砂漠となっていくのか」
「そうね……」
「では、お前たちがいなくなると、この世界はどうなるんだ?」
「さあ、どうなるかしら」
「人間は今、自分で自分の首を絞めてるのか」
「自滅への道を歩んでいることは確かね」
「なら、この事を公にすれば、幽閉してる奴らも解放するんじゃないか?」
「それはないわ。それどころか、ますます狩りはひどくなるでしょうね」
「なぜ?」
「人間のエゴよ。私たちを使って、他の土地を支配しようとするでしょうね。
人間は砂漠地帯では生きていけない。そこに付け込んで勢力を広げようとするわ。
そうなると秩序はなくなり、力あるものが世界を支配するようになる。
国単位で貧富の差が激しくなり、混沌とした世の中になる。
だから私たちは、人間が独自で歩きはじめたとき、姿を消したのよ」
「裕福になればなるほど、人間のエゴはむき出しになるからな」
「あの鏡が見付かるまでは、何の問題もなかった」
「そうだ。ダークルーラはなぜ存在するんだ?」
「……どういうところにも、裏切り者はいるわ」小声で答えて湖を見る。
「では、あの鏡を作ったのは」
「そう。人間と手を組み、両方の世界を乗っ取ろうとした、裏切り者が造ったものよ」
「そいつらはどうなったんだ?」
「その時の国王と戦って、消滅したわ」
「……その時に、鏡のことを聞き出せなかったのか?」
「いいえ。全部処分したはずだった」




