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真実を見抜く目をもって、清く美しい人と見てもそれが絶対の真実というわけではないことを光の王太子殿下に婚約破棄をされた私が思い知った日について語りましょう。

作者: 伊織

「すまない、僕は真実愛する人ができてしまった」


「え?」


「婚約破棄してほしい」


 私は目の前にいる婚約者に言われて戸惑いを隠せませんでした。

 金髪、青い目の美しい人。私は彼がそんなことを言うとは思っていませんでした。


「私、私何か殿下にしたとか……」


「君は悪くない、僕が悪い。真実の愛する相手ができてしまったんだ」


 婚約破棄というものは私が何も悪いことをしてない場合はできないもので。そう思ってました。 

だから私は殿下に対して失礼なことをしないように、教養やマナーも王太子の婚約者として相応しいようにと……。


「どうかうんといってくれるね?」


 有無を言わせない絶対強者の理論。

 私は殿下だけはこんなことを言わないと思っていたのは実は理由があって……。



『王太子殿下の婚約者ですか、すごくすごくうれしいですお父様!』


『そうかそうかそれはよかった』


 殿下の婚約者に選ばれ私は浮かれました。

 だって私の目から見ても光の王子といわれる殿下は立派な人でしたから。

 私と話すお父様がどうみてもトカゲにしか見えないちろちろと舌を出してにやにやと笑うようにしか見えない……。その真実をずっと生まれたときから見てきて、『人間』に見える人と結婚したいと思っていたのです。


 真実を見る目、人の心を見抜く目をもった人間がうちの家にはたまに生まれ。

 私はずっと人の心の醜い部分を見て生きてきたのです。


 母は美しいといわれた人らしいですが白豚にしか見えません。

 弟は小さな蛙。

 私自身はなんに見えるか? 怖くて鏡なんて直視できたためしがなく。

 度がきつい眼鏡をかけて、目が悪いといってごまかしていました。


 殿下は初めて見た時からずっと人間に見えて、赤ん坊とか幼い子供以外に人としての形で見た初めての人でした。

 聖職者といわれる人たちでさえ醜い生き物にしか見えませんでしたし。


 目をつぶそうかと何度も思いましたが、怖くてできませんでした。


 だからとても嬉しかったのです。


「私、私……」


「君は悪くない。僕は真実の愛に生きたいんだ!」


 真実の愛に生きたいってそれ私と婚約破棄してまですることですか? 清く正しい白い心の人がすることですか? 私は混乱していました。

 私はこの時ふっと思ったのです。

 人にとって絶対の善、絶対の正義とは己を基準としてあるものでは? と。

 なら殿下にとって絶対に正しいこととは己の考えのみではないかと。


 それは光でも清さでもなく、ただの無知だと……。


「ああ、幼い子供と一緒ですか」


「え?」


「無邪気と無知が表にでていただけなのですわねあはははは」


 私はおかしくておかしくてお腹をかかえて笑いました。殿下は戸惑ったようにこちらを見ていますが。

 成程、幼い子供が人に見えたのと一緒で、成長をしていないだけの人なのかと悟ったのです。


「ばかばかしい……」


 私が愛した人はこんな人で、18歳にもなって子供みたい。バカみたいだなと涙さえ出てきました。

 私はそんなに真実の愛に生きたいのならどうぞと笑いかけました。



「エレノアや、どうするのだいこれから?」


「そうですわねえ。婚約破棄された愚かな公爵令嬢と言われているようですから、隣国辺りにでも留学して相手を探しますわ」


「そうかい、手配してあげよう」


 トカゲが話していますが、私はもう汚いや醜いとは思いません。

 娘を愛する真実の響きがその言葉の端々にあったからです。

 汚濁に満ちたこの世界で生き抜くには醜いところがなくては生き抜けない。それがわかりましたから。

 トカゲだって大切な父です。


「大変ね、援助もしてあげるからしっかりね!」


「はいお母さま」


 白豚が蛙とともに心配そうにこちらを見ています。姉上と蛙が泣きそうな声で言います。大丈夫よ帰ってくるからと笑いかけました。


 私は眼鏡をとって鏡を見てみました。その中には蛇が映っていました。トカゲと白豚の娘は蛇だったようです。


「蛇ですか、なかなかかわいいじゃないですか」


 私はうふふと笑いました。

 そして殿下とその愛する人というのを隣国に留学した後遠目で見たのです。隣国の城に来ていたのでした。そこには見たこともない恐ろしい化け物がいました。

 さすがに化け物ばかり見ていた私ですが、あんな化け物を見たのは初めてで思わず気絶してしまったほどで……。

 それが縁で、隣国の公爵令息と婚約をいたしました。

 でも私は怖くて、あれから祖国に帰っても王宮には行けません。

 あんな恐ろしい怪物がいるところにはいきたくないのです。

 

 それから数年後、王家は王妃となった少女の豪遊が噂となり民衆の怒りを買い暴動が起きて襲撃されました。お父様はいち早く察知しておりましたのでうちの所領は無事でした。

 王妃と王は処刑されて、私は王都にいったのですが広場にはただのものとなり果てた人とも形がわからなくなった遺体があるばかりでした…。

 多分あの恐ろしい怪物によって破滅したのだと思うばかりでした。醜い部分しかない怪物なんて生まれてはじめてあの時みたのですから。

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[良い点] 主人公、婚約破棄される前なら自分の姿は人間に見えていたように思えます。 [気になる点] 王妃が怪物に見えたとのことですが、いままで見かけたことはなかったのでしょうか? 身分については触れら…
[一言] 人が1番醜く見えたということでしょうか? 周りは動物?ばかりに見えていたはずなのに、 なぜ人間を理解できたのか読解力なくわからなかった
[気になる点] ちなみに、公爵令息はどんな動物に見えたんでしょうかね?
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