ポンコツポテチ
次の日。
俺はいつもより憂鬱な気持ちで学校に向かった。
スクールバックの中に入っている画材とスケッチブックのせいで、心も身体も重くなっている。
(クソッ……なんで俺が部活に行かないといけないんだ)
今日行くって決めたのは俺なんだが。
なんだかんだ、結局俺は先輩の言うことを聞いてしまう。
先輩と一緒に過ごす時間は麻薬のようなもので、一緒にいる間は心地いいのだが、先輩と一緒にいない時は、先輩のことが気がかりでしょうがなくなる。
(まぁ、これでも落ち着いた方なんだけどな……)
そんなことを思いつつ空を見上げた。
空は若干曇っていて、煮え切らない天候。
正直、天気の中では曇りが一番嫌いだ。晴れにも雨にもならないどっちつかずな感じがイライラする。
(って、それは俺も同じか)
自分でツッコんで鼻で笑ってしまった。
俺だって、幽霊部員というどっちつかずの頂点みたいな立場じゃないか。
曇りが嫌いなのは、ひょっとして同族嫌悪からかもしれない。
そんなことを考えていたら、いつの間にか校門についていた。
いつもより早く来すぎたせいか、まだあまり生徒が登校してないように見える。
随分散ってしまった桜と新一年生らしき生徒達が楽しそうにおしゃべりをしている姿を見ると、もう時期春も終わるんだなぁと感じてしまう。
「相澤くん……!」
下駄箱で靴を取り替えていると、後ろから横峯さんの声がする。
振り返って見ると、小走りで俺の方へ向かってきていた。
「よ、横峯さん! おおおおおはよう!」
「ふふ、おはよう」
俺は挨拶をするのに緊張して力んでしまった。
そりゃあそうだろう。相手はつい最近まともに喋りだした学年一の美少女だぞ。横峯さんに爽やかに挨拶できる人は美人慣れしたイケメンだけって決まっているんだ。
学校モードの横峯さんは凛とした態度で、俺の家にいたときとはまるで違う。
それでも――
「相澤くん、今日の課題終わった?」
「いいや。俺は昨日撮り溜めていた深夜アニメを見てたからな。やってない」
俺が今日の分の課題をやっていないことを知ると、横峯さんは何故かドヤ顔で胸を張って見せた。
あ、俺この横峯さん知ってる。
「ふ、ふぅん? まだ課題終わってないんだぁ? へ、へー? このままじゃ先生に怒られちゃうんじゃないのぉ?」
「……まぁ、そうかもな。でも、怒られたらその時はその時だろ」
「も、もし相澤くんがどうしても課題見せて欲しいってお願いするんだったら学年一の美少女マドンナが見せなくもないかもしれないなぁ〜! ふふふ〜ん、ふふん」
こっちをチラチラ見ながら、ちょっと下手くそな鼻歌を歌う。
鼻歌はいつも俺が歌っているというアニメの主題歌だ。わざわざサビ以外も覚えてきたのだろうか。
「じゃあ、その学年一の美少女マドンナにでも課題見せてもらおうかな」
俺がそういうと、横峯さんは目を細めてニヤリと口角を上げた。
「ふふふ、仕方ないな〜。それじゃあ、今日のお昼は相澤くんの奢りね! ハンバーグスペシャルセットでよろしく〜ぅ!」
「は!? ハンバーグスペシャルセットって一番高いやつじゃねえか!」
この女、容赦がない。
でもこれって、横峯さんとお昼ご飯が食べれるってことじゃないか? そういう解釈で合ってるよな……?
「な、なぁ横峯さん……」
「ん? どうしたの?」
思い上がりにしたくなかった俺は、意をけして横峯さんに聞いてみる。
「これって、お昼を二人で食べるってことでいいのか……?」
すると、横峯さんは急に俺の目の前に立ち、俺のほっぺを両手で挟んできた。
「そういうのは察してよ! 相澤くんのポンコツポテチ!」
「いててて! ポ、ポンコツポテチってなんだよ!?」
「ポンコツポテチはポンコツポテチだよお! わ、私は先に教室入るからねっ!」
そう言って、横峯さんは教室へダッシュで行ってしまった。
どうせ同じ教室で隣の席なんだから逃げなくてもいいのにと思ったのはここだけの話。
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