自意識過剰
「横峯さ〜ん! 同じクラスだね! 嬉し〜!」
「ふふ、私も嬉しいよ。一年間よろしくね」
「横峯さん、髪サラサラ〜。どこのシャンプー使ってるの?」
「いち髪だよ。実は、最近シャンプー変えたんだ」
横峯さんは、聖徳太子のように複数人の女子達の会話を聞いては答えている。
常に可愛らしい笑顔で応答する姿は、まさに天使そのものだった。
「今日も横峯さんかわいいな〜……」
「うを! 俺、今横峯さんと目が合った!」
「バーカ、横峯さんは俺のこと見てたんだよ」
後ろにいる男子達は、横峯さんを見るなり、口々に好き勝手言っている。
そいつらの一人と目が合い、横峯さんの隣が俺だということをそれとなく確認をしていた。
「へ〜、あいつ横峯さんの隣なんだ。いいな〜」
「誰だっけ、あいつ」
「確か相澤って名前だった気がする」
「ふ〜ん。まぁ、あいつと横峯さんが付き合うことはないだろ。安心だな」
「だな〜」
聞こえているぞ。失礼な奴らめ。
あいつらの言うことを否定するつもりはないが、万が一の可能性を残してくれたっていいじゃないか。
俺は自分の席に座り、スマホの電源を入れてお気に入りのソシャゲを開き、先生がくるまでレベル上げに勤しむ。
ソシャゲをしている時間は何も考えなくていいから好きだ。
クラスのこと、勉強のこと、将来のこと、それと……部活のこと。
それから、体感十分弱。
新しい担任が教卓へ立ち、自己紹介を始めたことで、嫌という程新学期が始まるということを頭に刷り込まされた。
新しい何かが始まるということから目を逸らしたくて、窓の外をぼんやり見つめる。
外は晴天で、桜がよく映えていた。
窓際ということもあって、ポカポカと暖かい春の兆しがダイレクトに当たって、眠気を一層増加させる。
(……あれ。横峯さんもこっち見てる)
窓の反射で、横峯さんも窓の外を見つめているのがわかる。
窓の外を眺める姿でさえ美しい。
(……こう見ると、俺の事見てるみたいだ)
ああ、横峯さんの後ろでだべっていた男子の気持ちわかるな。
横峯さんの目線が少しでもこっちを向いてると、俺のことを見てるんじゃないかと錯覚してしまう。
自意識過剰だなんてわかっているが、意図せず学年一の美少女と隣になったんだ。別にこれくらい思ったって、バチは当たらないだろう。
(あーあ、俺も横峯さんぐらい完璧な人間だったら、人生イージーモードだったのかな)
何をしていても人を惹き付けてしまうなんて、ズルすぎる。
(俺と真逆な人間だな……)
きっと隣の席にならなかったら、こんなに近づくことはなかっただろう。
もう一度窓越しに横峯さんを見てみると、横峯さんは窓の外を見て微笑んでいた。
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