第三章 第11話 やはりランドルフは良い人だった
ナスウェル宿屋
「四人でお祝いをしましょう!」
ランドルフよりお祝いの提案を受けるが、コルセイは《明日に改めて》と丁寧に断る。
オリビアと共に外へと出て行る。二人は宿から少し離れ、桟橋の近くまで歩くとオリビアは大きな岩に腰を下ろした。
「ランドルフから聞いた」
何を聞いたのだろうか? 不安から表情が少し引きつる。
「別に私は怒っていない。ただ……少し寂しかった。もっとコルセイの事を知りたいはずなのにランドルフが私の知らないコルセイを楽しそうに話すたびに私は寂しい気持ちになった」
「……」
「さっきだってアヤカと二人で楽しそうに話してるのを見て、正直羨ましかった」
「ごめん」
オリビアは小さくため息をつくと静かに立ち上がりコルセイを見つめる。
「謝らなくて良い、仲間と久しぶりに会えば会話も弾む」
(少し違うような気がするするけど、オリビアが俺の事を信じていてくれたのは助かった)
「これからはもっとコルセイと思い出を作りたい。ランドルフやアヤカよりもコルセイの事をもっと知りたい」
「うん。そうだね。俺もオリビアのこと知りたいよ」
誤解はしていなかったようだ、心の底から安心する。たわいもない話をしばらくした後にオリビアの手を取る。
「帰ろうか」
オリビアは無言で頷くと夕暮れの中二人は宿に向かった。しばらくして宿にもうすぐ着くというところでオリビアが立ち止まる。
「コルセイ、最後に一つだけ」
「ん、何?」
「私たちは傭兵。上品な貴族ではない。妻を何人も娶りたいなら私は構わない」
「えっ。えっ? 何を……」
オリビアは今までの穏やかな表情から打って変わって先程見せた鬼の形相となる。
「その場合は私と決闘して勝たなくてはならない。妻を複数娶るとはそういう事」
メキッ!
コルセイの指から日常では聞きなれない音がする。
「だ、大丈夫。そこは心配しなくて良いから」
※※※
宿に入ると心配していたのか二人が入口で出迎えてくれた。ランドルフは眉を八の字にし、露骨に心配している。マスクを被っていないアヤカにまだ慣れないが、すました顔をして先程までの愛想の良い顔は見せない。
「おかえり~~。もう、心配したんだから」
「すみません。ご心配おかけしました」
「良いのよ。気にしないで」
オリビアの穏やかな表情を見てランドルフとアヤカも安心をしたようだ。
「おかえりなさいオリビアさん」
「心配かけた」
少しぎこちない感じがするのは気のせいだろうか?
「オリビアさん、少し話せる?」
「構わない」
(えっ? 何を話すのだろうか。正直心配でしょうがない)
言葉少なげに二人は二階の部屋へと登って行く。コルセイは心配そうにランドルフを見ると少し困った表情をうかべる。
「私達はあっちに行きましょうか?」
併設のカウンターに二人で移動する。話が終わるまで食事を頼み特産品のエールを頼む。
「ここのエールは柑橘系の果物が入っているの。お酒が苦手の人も美味しく飲めるわ」
届いたエールを口に含む。確かに口辺りは良い。これなら酒が苦手なコルセイでもそれなりに飲めるであろう。コルセイは緊張で渇いた喉を潤す為、一気にエールを流し込む。
「あら。ちょっと会わない内にお酒が飲めるようになったのね」
「そんな事はありません。未だにお酒は苦手です。ただ、今日は本当に緊張したので喉が渇きました」
「緊張? 何かあったかしら。そういえば見てこの服、オリビアちゃんに見繕ってもらったのよ」
魔獣の皮を加工して作ったレザースーツ。所々に加工が施されており伸縮性に優れた機能を持っているようだ。細身のコルセイには似合わないのだろうが、がたいの良いランドルフはにはよく似あっている。
「良い娘ね。大事にしなきゃダメよ!」
「あ、はい」
少し笑みを浮かべるコルセイ。凶悪な人相を指摘されるコルセイではあったが、ふとした瞬間に見せる表情は年相応の少年に見える。
「ランドルフさんすみませんでした」
「突然どうしたの?」
「オリビアの様子が辺だったので俺の過去を面白おかしく話しているのでは? と疑ってしまいました」
「はっはっはっ。そんな事する訳ないじゃない! そんな酷いこと流石のカルディナ様でもしな……するかしら」
「隊長ならやり兼ねませんね」
二人は顔を見合わせるともう一度静かに笑う。
「隊長、大丈夫ですよね?」
「当たり前じゃない」
ランドルフは残ったエールを一気に飲み干すと、店員にもう一杯注文を頼む。コルセイも便乗してエールをもう一杯頼む。
「そういえば、二人で何を話してるんでしょうかね?」
「あのアヤカよ。心配しなくて良いわ」
「そうですね。これから四人で行動するんですから余計な事は言わないですよね」
注文したエールが届く。ランドルフと木製のタンブラーで乾杯するとその夜はランドルフと夜更けまで酒を飲み交わした。




