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第一章 第9話 鬼畜


兵士詰所

 

「あ、意識が戻ったわよ!」


 目がさめると見知った天井、すぐ横には心配そうに見ているランドルフとオルタナがいる。どうやら詰め所に運ばれたようだ。


「俺、死ななかったんですか?」


 安堵感と嬉しさが同時に込み上げ、無意識のうちに目から涙が流れ出す。


「お、俺、生きてる。う、うっうぅ」


 全身が固定されているようで動かす事は出来ない。オルタナも心配していたようで涙を流しながら無事を喜んでくれる。意識を覚ましたと聞きつけ、別の部屋に待機していた隊長も顔を覗かせた。


「うっう。俺、どうして助かったんですか? ランドルフさんですか?」


「バカねぇ。隊長よ。ゴブリンが出たとの報告を受け、探索を切り上げて急いで戻ってきてくれたのよ。ちょうど、とどめを刺されそうなところを隊長が助けてくれたってわけ」


「倒れたゴブリンをどかしたら気を失ってるんだもん。あなたを運ぶの大変だったのよ」


「た、隊長ーー。ありがとうございますぅぅ!お、おれ、あなたの事冷たい人だななんて思ってました。す、すみません」


「いいのよ。今回は私の落ち度でもあるわ。大事な仲間を危険に晒す訳にはいかないものね」


「あ、ありがとうございます。俺、あなたの為に頑張ります」


 涙と鼻水を垂らし、ぐしゃぐしゃになった顔でコルセイはカルディナに感謝を伝える。


「いいのよ。腕利きの神官の魔法と高級薬草で傷は一週間程で治るそうよ。傷が治ったらまた宜しくね。今日はゆっくり休みなさい。ランドルフ、目が覚めたみたいだし行きましょうか!」


 二人は踵を返すと扉を開け詰所を後にする。


「オルタナもありがとな。俺、隊長の事勘違いしてたよ」


「本当に良かったな! 俺も隊長にあんな一面があるなんて知らなかったよ」


「俺、怪我が治ったらこの隊の為に死ぬ気で頑張るよ!」


 ※※※


 詰め所を後にしたカルディナとランドルフはボアボア亭に向かい進む。


「隊長。何が『貴方を運ぶのは重かった』ですかコルセイちゃん運んだのは私じゃないですか。ドン引きですよ」


「ランドルフだって助けたのは私って言ってたじゃない。実際助けには入るつもりだったんだから、まんざら嘘ってわけじゃないわ」


 先程までの天使の微笑みは何処へやら、冷たい能面なような表情で言い放つ。


「ゴブリン四匹に死にかけてるようじゃ兵士としていまいちね。どうにかしようとした意気込みだけは買えるかしら」


「それ、絶対にコルセイちゃんに言わないで下さいね。あんなに頑張ったのに一生もんのトラウマになりますから」


「ランドルフは本当にコルセイに甘いわね。それにしてもあの状況どう判断すれば良いのかしら」


 カルディナが表情を曇らせる。どうやらランドルフも同じような心持ちらしく表情は優れない。


「コルセイにとどめを刺そうとしたのを助けたのは革鎧を着たゴブリン。正確には死んで動かないはずの革鎧のゴブリンが小太刀で後ろから太っちょのゴブリンを突き殺した」


「うーん。本当に間違いないんですか?」


「間違いない。一瞬たりとも目を話さなかったもの。革鎧のゴブリンも生きていたわけじゃない、太っちょのゴブリンを刺し殺した後、死んでいる姿をすぐに私が確認したわ」


 カルディナは難しい顔から元の美少女の笑顔に戻す。


「まぁ、わかんない事はこれから色々試せばいいわ。ランドルフ頼んだわよ」


「了解しました。あ、そういえば隊長、コルセイが襲われるってよくわかりましたね。私がマッドゴブリン倒す頃にはコルセイの近くにいましたよね?」


「もちろんわかっているわよ。だって襲われるの知ってたし」


「えっ?」


「私がコルセイにあげたペンダントあるでしょ? あれ魔物集めの呪い(まじな)がしてあるの。集まったのがゴブリン四匹だけで良かったわ」


「……隊長、やっぱりあなたドン引きです」


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