表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/326

第三章 第4話 ランドルフ

 

 母親の温かな手を握りながら少年は尋ねる。


「ねぇ、母さん。僕はみんなみたいに戦わなくてはいけないの? 僕は戦いたくない。皆が怪我をするのを見たくないんだ」


「そう。ランドルフは優しいのね。母さんもできればランドルフには戦って欲しくないわ」


「うん。そうするよ! 僕は薬草摘みの仕事がしたいんだ。森に行って母さんを治す薬を作りたい」


「そうね。バルフン族も変わりつつある、貴方の願いが叶うように母さんがお祈りしておくわ」


「うん。母さん大好き!」


「私もランドルフが大好き」


母親は目一杯ランドルフを抱きしめ、ランドルフは満面の笑みを浮かべた。


 ※※※


 数年後 バルフン族集落


 木造の家には火が放たれ、激しく炎が燃え盛り。家々は崩れ、街には住民の死体が転がる。死体には激しく争った痕があり、死体には幾つもの剣が突き刺さり針の筵ようだ。


「複数で戦え! バルフン族といえど女子供だ。油断せずに囲って一人ずつ確実に殺せ!」


 統一感のある金属の鎧を身につけた兵士達は、集落に男達がいない隙を見計らい集落を襲撃したようだ。兵士が母親であろう遺体をどかすと、その陰に隠れる子供の髪を持ち強引に立たせる。


 どうやら、傍に倒れている母は最後まで子供を守り、兵の全ての攻撃を受け絶命したようだ。母の横には数名の兵士の死体も見受けられる。


「正義に抗い、愚かな女一人で尊い兵三名の命が奪われた。同志達よ。この恐ろしい部族を生かしておいてはならない!」


 少年を卒業し、青年に向けて子供。歳の頃は十三、四といったところであろうか。他のバルフン族と比べ筋力は乏しく、身体の成長も他の子供に比べると貧相だ。そんな子供にも兵は容赦はしない。取り囲み各々に剣を構える。


「母さん……」

「母さん、母さん」

「母さん! 母さん! 母さん!」


 母親に守られて泣いていた貧相な少年。少年は頭を掴む兵の腕を握ると歯を食い縛り、口の端には泡を立て激しく興奮していく。


「俺たちが何をしたんだ!!」


 少年が頭を掴む兵に体当たりをする。貧相な体格に油断していた兵は一瞬で弾き飛ばされ、民家の壁に激しく当たると大量に吐血。そのまま動かなくなる。


「なっ! 子供と思うな。バルフン族は人間ではない!」


 指揮官と思われる男の声に合わせて、兵が一斉に飛びかかる。剣は確実に子供を捉えてはいるが剣が子供の命を奪う事はできない。


「おまえ達、ただで済むと思うなよぉぉぉ!」


 自分に向けられた剣の刃先をそのまま素手で掴むと、力任せに兵を引き寄せ、逆の拳を目一杯振り抜く。


 グシュッ!


 何かが潰れる音がすると、男の顔面に綺麗な穴が空いた。


「ウンナァァァァ!」


 絶命した兵の剣を奪い取ると、そのまま取り囲んだ兵に力の限り突き刺す。一体、二体、三体串刺しにしたところで剣の勢いは止まる。そのまま絶命した串刺しの兵を蹴り倒すと、先程まで威勢の良い言葉を吐いていた指揮官に鋭い視線を送る、指揮官は腰を抜かし地面に這いつくばっている、どうやらあまりの恐怖に股間を濡らしているようだ。


「あ、あぁぁっ」


 少年は無言で足を持ち上げる。指揮官の上に足を固定すると顔面を勢いよく踏み砕いた。


 メキョッ!


股間を濡らしていた指揮官はもう動くことはない。


「くそ。何でだ! 何で……母さん。うぅ。母さぁぁぁぁん!」


 鬼気迫るランドルフにを見て、兵達は敗走する。母の犠牲で覚醒したランドルフによりバルフン族は全滅を免れ、その後ランドルフはバルフン族の英雄となる。


 ※※※


「お母さん!!」


 ランドルフが起き上がると目の前には恐ろしい凶相の男がいる。一瞬、まだ夢の中にいる錯覚を起こすが、周りの様子を見て昨晩の惨事を薄らと思い出す。


「私、昨日襲われて……奴隷商に……あのマスクを」


 まだ錯乱しているようだが、理性は戻ったようだ。


「ランドルフさん。分かります? 俺です。コルセイです。覚えてますか?」


「コルセイ。コルセイちゃ……ん?」


「お久しぶりです。ランドルフさん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ