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第二章 第49話 黒狼傭兵団の終わり


 ロザリア王国ならではの慣習がある。


 時期国王を決める取決めが独特なのだ。各王子は其々騎士団を持っているが、その規模、功績、影響力などの総合的な観点から王子の資質を判断し、時期国王を決める。


 現在、騎士団を持っている王子は三人。


 長男のシーエンス王子。国からの大半の騎士団を引き継いでいる。私設の騎士団も所有しており、全部で5つの騎士団を所有。三男のスウェン王子は少数ではあるが腕利きの冒険者を雇い入れており、精鋭揃いの私設の騎士団を一つ。最後に傭兵団上がりの白銀騎士団を手元に置くサリウスの三人である。


※※※


 サリウスの白銀騎士団が存続不可能になった為、その後釜として黒狼傭兵団ガーランド団長、ロザリア王国第二王子サリウスで話し合いの場を設ける事となる。


「まずはこの度の黒狼傭兵団の働き見事であった。礼を言う」


「はっ。光栄であります」


「どうした? いつものようにして構わんぞ」


 サリウスの何気ない一言にガーランドは珍しく表情が強張る。話し合いが設けられた場所は王宮の客間であり、どこの誰が話を聞いているのか分からない。サリウスに他意はないのであろうが、ここでのミスはガーランドとしても痛いものになりかねない。


「ふふふっ。イルミナ、例の物を」


 イルミナが厚手の羊皮紙を取り出すと部屋で縦に引き裂く。羊皮紙は淡い碧色の光を放つと、一瞬で燃え尽き、淡い光ご部屋中に広がる。


「サリウス様、申し訳ないな。あんたを信じてない訳ではないのだが[諜報遮断]の魔道具を使って貰えるとこちらとしても安心できる」


「これは愉快だな。黒狼のガーランドとあろうものが王宮如きにに恐れを抱くとは」


「何を言ってるんだ。王宮ほど怖いもんはこの世の中にないぜ」


 先程までの警戒した表情から一転してサリウスに笑みを浮かべる。


「さて、分かっているとは思うが、ここに其方を呼んだのは騎士団の任命についてだ。不慮のスタンピートにより白銀騎士団は指揮系統が壊滅。隊の半分とジョッシュは無事ではあるものの、ダヌム亡き今、白銀は騎士団を存続するのは難しいと考える。そこで白銀騎士団を吸収合併し、黒狼傭兵団に私の騎士団になって貰いたいと考えておる」


「……」


「ガーランド受けてくれるか?」


 少しの間を置き、ガーランドは片膝を着くと恭しく頭を垂れる。


「謹んでお受けさせて頂きます」


「安心した、頭を上げてくれ。これから騎士団就任の祝いをしたい所だが少し野暮用がある。私が戻るまでイルミナと契約の内容などの細い話をしておいてくれぬか?」


「承知したぜ。サリウス様」


 いつもの様子に戻ったガーランドに小さく笑みを浮かべるとサリウスは部屋を後にする。


 続いてお付きのイルミナが現れるとガーランドを別室へ案内する。部屋のテーブルには書類が山積みとなっており、今からそれに目を通すのかと考えるとガーランドは露骨に嫌な表情を浮かべた。


 ※※※


 説明が終わり、粛々と書類にガーランドの名前が書き込まれる。区切りが良いところになるとガーランドは椅子を立ち上がり、おもむろに腕を上げると背筋を伸ばし声を上げた。


「あぁ〜。これからこんな事ばっかりなのかい? 高貴な方々は煩わしいことが好きだねぇ」


 ガーランドの無神経なセリフに不快な表情を浮かべるイルミナ。


「あの豚といい無神経なお前といい、サリウス様の元には碌な奴が集まらない」


「ふふふっ。そう言うお前もな。俺とお前の事を知ったら王子様は卒倒するんじゃないのか?」


 すっと腰を落とすとイルミナは素早く腰の剣に手をかける。


「やめておけ。ここがどこか分かっているのか? 王子様の事を考えるなら軽率な行動は慎むんだな」


「お前こそサリウス様に余計な事を言ったらどうなるか分かってるんだろうな」


「王子様の事になると頭に血が昇る癖は治しておけ。いつかお前自身が王子様の足を引っ張るぞ」


「大きなお世話だ」


 イルミナが腰の剣より手を離し、ガーランドに視線を外す。


「少なくともダヌムと違い、俺はサリウス様を裏切る気はない。だからお前も俺と組んだんだろ?」


「あの豚より、お前の方がマシに思えただけだ」


「まあ、そう言う事にしとくか」


 話を終えるとガーランドはそのままイルミナを背に扉に向かい歩き始める。


「どこに行く気だ!」


「王子様も中々戻ってこない。キリの良い所までは終わった、今日は帰らせて貰うぜ。サリウス様に宜しくな」


 イルミナは呆れているようではあるが、これ以上ガーランドを止めはしない。扉を出る寸前でおもむろにガーランドが立ち止まる。


「なあ」


「何だ?」


「お前、王子様と上手くいけば良いな」


 ダッン!


 閉じた扉に剣が突き刺さる。ビーーンと振動した剣は数瞬で静かになる。


(だから頭に血が昇る癖を治しとけって言っただろうが)


 愉快そうに笑みを浮かべる。ガーランドは無駄にふかふかしたカーペットを歩くと顎の髭を触りながら帰路についた。


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