第二章 第29話 ジマの古城
ジマの古城
城の外では数多の魔物のざわめきが聞こえる。しかし、魔法陣の防壁により魔物は城に手を出すことはできない。
機能性を重視いたジマの古城では部屋が全体的に狭く、定員を超えた現状では人との距離が近く、皆、圧迫感を感じている。けれども、機能性を重視したジマの古城だからこそ、迫りくる魔物の脅威からも身を守れているのも間違いない。部屋のテーブル囲むのは豪著な装飾がなされた鎧の男達。見目麗しい青年を中心に周りを囲む男達は疲れた表情をしている。
青年は金髪に碧眼、肩口で揃えた髪。幼さが残るものの鼻筋の通った整った顔立ち。考え込む仕草からは品の良さが伝わり、一目見るだけで位の高いものとわかる。青年は不安から席を立ち右に左にと狭い室内を歩き回り気を紛らわしている。
「殿下、ご安心ください。このジマの古城は居心地こそ優れぬものの、立て籠もるには最適な城となっております。古くからございます攻撃魔法を分散をする城固有の魔法陣も問題なく発動しており、先程のアイアンホーネットクイーンも成す術がなかったのをご覧になっているはずです」
男は汗ばみながら優然と話す。鋭い目と先を見通す能力は今も健在ではあるが、鎧は着ているだけの飾りで、体はだらしない贅肉の塊である。久しく前線に出ていないと思われる人物は白銀騎士団の団長ダヌムである。
「分かっておる。スタンピートも今は落ち付きつつある。直に黒狼が助けに参るであろう」
百戦錬磨の騎士団団長に対して、怖気付かずに毅然と話す態度は将来の有望性を感じる。しかし城内には第二王子サリウスと白銀騎士団数名に王子のお付きの騎士のみの危機的な状況。その有望性は風前の灯火である。
「はっ! しかしあやつは腕は立つものの、後ろめたい噂の絶えぬ男。利用はしても信用してはなりませぬ」
「ダヌム。白銀がまだ傭兵の頃より我も世話になっており、この先ももちろん期待をしておる。しかし国は多様性を必要とする。戦の絶えぬこのロザリアでは、あのような男こそ使いこなせなれば、と我は考える。それにお前が言うほどガーランドも酷い人物ではないのかも……と最近は考えたりもするぞ」
ダヌムは肉で潰れた小さい目を見開くと、今日一番の大声をあげる。
「なりません! それでは彼奴の思惑通りでございます。考えを御改めて下さい。信用を積み重ね、ここ一番の所で頭を喰いちぎる! それがガーランドという男でございます!」
突然のダヌムの変わりように驚いたサリウスは少し後退る。
「あ、相変わらずガーランドの事なると熱くなるな。そうだな、考えておこう」
「はぁはぁ。大変失礼しました。私めの考えを汲んで頂きこのダヌムは幸せものでございます。スタンピートの状況も好転して参りました。しばらくは休んで頂いても結構かと。奥に小さいながら部屋を用意しております。少しお休みください」
「うむ。そうだな。任せるとしよう」
サリウスが扉を後にするとお付きの者がダヌムをじっと見つめている。無表情で感情を読み取ることができない表情だ。
「何をしている。サリウス様を一人にするのか?」
お付きの兵は言葉をかけられた後も無表情を変えず、ダヌムに背を向けぬままドアの奥の暗闇へと消えていった。




