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第二章 第22話 人物鑑定屋2

 

 老婆はコルセイを椅子に座らせる。小瓶の蓋を開け、椅子ごとコルセイの周りに灰のような物で円を描くと棚に置いてあった干からびた魔物の羽根を握らせ、小さく呪文を唱えた。


「沼地の主よ、古の供物を糧に我に力を与えよ《闇撫》」


 コルセイの周囲に黒い(もや)が現れる。靄はあっという間にコルセイの周りを包み込み、薄ぼんやりとコルセイの周りが黒くなる。


「うわっ。何だこれ、気持ち悪い」


「これは坊主の周りにあるものに魔力を与え、具現化させたもの。これでお主にも嬢ちゃんにもハッキリと見えるようになったじゃろ。皆が何となくお前に怯えていたのはこれが原因じゃ。なんか心当たりがあるのではないか?」


「……あるといえばあります。ところで、これ、俺に何か害があるんですか?」


「たぶんない。ただのぉ、こんな靄を出している人間はこの世にはおらんからこの先どうなるかはわからん。しかも、死者というのは基本的に生者に嫌われるものじゃ。人間はもちろん、亜人、動物、魔物、魔族この先お前の事を好ましく思う者はおらんじゃろう」


「……洒落にならないじゃないですか。どうにかならないんですか?」


「お主、この靄を消す事は出来んのか? 具現化してわかりやすくなっておるじゃろう。ちょっと試してみよ」


 コルセイは黒い靄に意識を向ける。漠然と靄自体を動かそうとしてみるがピクリともしない。それではとゴブやスケさんを動かすように魔力の流れを靄に伝えて見るが、これまた反応は無い。


「これどうやったら消えるんですか?」


「具現化した靄は儂の魔力が切れるか、お主の魔力が切れれば目には見えなくなるじゃろ。靄自体の消し方はわからん。今までの話を聞く限り、普段から垂れ流しているようじゃからな」


「そ、そんな。今後、誰からも好かれないなんて絶望じゃないですか? 何かメリットは無いんですか?」


「メリットかどうかはわからんが、もし坊主がアンデッドだった場合は媒介等を使わずにアンデッドの特性や魔法を使う事ができるかも知れん。それこそ化け物の仲間入りだがの。しかし坊主、お前魔法は使えるのか? 使えんののではないか? 使えておれば魔力の制御でそのわけのわからん黒い靄も垂れ流す事はないだろうからの」


「おっしゃる通り。俺に魔法の才能はありません。ちなみになんですが、店主さんアンデッドが使える魔法って覚える事は出来るんですか?」


「アンデッドの魔法を人間が理解できる訳なかろう」


「いや、そりゃそうですけど。さっき店主さんが使ったのは違うんですか?」


「あれは呪術の応用でアンデッドの魔法を模倣したようなものじゃ。まあそういう意味では似たようなものは使えるかもしれんの」


 コルセイは顎に手を置き店主をじっと見つめる。老婆も同じように見返してくると自然と見つめ合う形となる。


「――店主さん」


「なんじゃ、坊主」


「その魔法、俺に教えて頂けませんか?」


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