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第二章 第9話 違和感


「おっ! コルセイ久しぶりだな。相変わらず……ではなさそうだな。身体がでかくなったのは良いが、その血色の悪い顔は何だ? 死人みたいな顔してるじゃねえか?」


 魔物の革をふんだんに使った厚手の鎧に厳つい身体。髭を摩りながら何やら小難しい顔している。以前と全く変わらないガーランドがどっしりとそこに座っていた。


「お久しぶりです隊長。コルセイ、先程アイスミレ平原より戻りました」


「おう。口の聞き方も様になってきたじゃないか? シモンズにでも教えて貰ったのか?」


「シモンズさんには良くしてもらっています。隊長は相変わらずのようで」


「相変わらず? 相変わらずってどう言う事だ!? ……まあいい。長旅ご苦労だったな。ゆっくり休んでくれ」


 相変わらずのガーランドだと思ったのもつかの間、少し違和感を感じる。そういえばいつもそばにいるダレスはどこに行ったのであろうか? 瞳だけでガーランドの周りを探るがダレスはいないようだ。


「今日はダレスはいないんですか?」


「ああ、今はいない。それより疲れているだろう。食事と風呂を用意させてあるしばらく休め」


 歯切れの悪いガーランドに違和感を感じつつ、コルセイは自分の天幕に戻る事にする。


「そうですか。では、お言葉に甘えさせて頂きます」


 ガーランドに軽く頭を下げ、シモンズに目線を送るとコルセイは天幕を後にする。


 食事を取り、装備の手入れなどを軽くこなす。夜も更けてきた所でコルセイはとある天幕を訪ねた。もちろんガーランドのあの余所余所しい態度を探るためである。


「シモンズさん今大丈夫ですか?」


「小隊長? どうぞ入ってください」


 天幕の扉を開けシモンズが顔を出す。どうやらコルセイが訪ねてくるのを予想していたようだ。


「夜分にすいません。休んでいる途中でしたか?」


「いえ、本隊への合流が久しぶりでしたからね。気分が昂って中々寝付けず一人でちびちびやっていた所です。小隊長も如何ですか?」


「いや、俺、酒は苦手なんで。遠慮しときます」


「そうですか? なら紅茶でも。よい茶葉が手に入りましたので」


「ありがとうございます。頂きます」


 熱い紅茶に山羊の乳をたっぷりと入れたカップをコルセイの前に差し出す。


「口あたりが良い、美味しいです。お邪魔した上にお茶まで頂きありとうございます」


「いえいえ。私以外に飲む者もおりませんのでこんな物で喜んで頂けるのは嬉しいです。ところで小隊長、夜分にどんなご用件で? これからの黒狼傭兵団を熱く語るのでしたら大歓迎ですが」


「はい。わかってるとは思いますがガーランドについてです。いつも一緒にいるダレスがいませんでしたし、あの余所余所しい態度。あんなガーランドを見たのは初めてです。シモンズさん何か聞いてるんじゃないですか?」


 シモンズは気まずそうに少し時間を置いてから話し始める。


「やはり気付きましたか。隊長は駆け引き上手に見えて、時々、顔に出てしまっているんですよね。大変申し上げにくいのですが……」


 どうしたものかと考えている様子でシモンズはそれ以上話そうとしない。


「シモンズさんお願いします。もし答えてくれなくても他を当たるだけです。シモンズさんには迷惑をかけないようにしますのでお願いします」


「……現在、オリビアさんが行方不明です。その捜索にダレス隊があたっています」


「!? どういう事ですか?」


「先日大規模な討伐戦がありました。黒狼と白銀騎士団との合同作戦です。白銀騎士団のヒーラー不足の為、オリビアさんは騎士団に従軍。ガーランド隊長も別部隊で参加しました。討伐は上手く行ったのですが、敵との戦いで一部隊が戦線を離脱しました。その離脱した部隊にいたのがオリビアです」


「はっ!? 救援はどうなったんですか? オリビアは無事なんですよね?」


「ガーランド隊長はダレス隊を救援に向かわせてます。ただ、部隊が離脱してからだいぶ時間が経っていた様で、捜索は難航しております。すぐに向かえばこんな事にはなってなかったと思うのですが」


「すぐにとは? どういう事ですか?」


「騎士団は傭兵を雇った事を大ぴらしたくなかったのか救援には向かわずヒーラー部隊を切り捨てたんです」


「はぁっ!? 騎士団が?」


「ガーランド隊長も騎士団に抗議をしようとしたのですが、正式に抗議する事はできませんでした。今回、直接白銀騎士団を指揮していたのは第二王子のサリウス王子らしいのです。流石のガーランド隊長も第二王子には抗議はできなかった様です」


「そんな馬鹿な!!」


 コルセイは地面に拳を叩きつける。


「ご存知とは思いますがサリウス様は黒狼のビッグスポンサー。理不尽な気持ちはわかるのですがガーランドといえ、どうしようもないみたいです」


「分かってます。分かってますが、でも!」


 膝に手を当て立ち上がると天幕を出ようとすると、シモンズが呼び止めようと声をかける。


「小隊長! どこに行かれるんですか!?」


「もちろんオリビアの所に。戻ってきたら【情けない奴だ】とガーランドに言ってやりますよ」


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