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第一章 第4話 ボアボア亭


 大衆酒場 ボアボア亭


 ヒエルナ皇国を囲む大森林は恵みの宝庫であり、狩猟による獣肉、良質な土壌から取れる果実は近隣諸国に広く知れ渡っている。その肉や果実を使った料理が売りの大衆向け食堂ボアボア亭では、神殿騎士団により貸切でスタンピート撃退の打ち上げが行われていた。


「今日は大隊長が全額奢ってくれるから好きなだけ飲み食いしなさい!」


 ランドルフから有難いお言葉を頂くと一斉にボアボア亭では歓声が上がる。


「オルタナさん! 俺たちの隊長はどこに行ったんです? あれからまだ顔を見てないんですが」


「おっ! コルセイは我らが小隊長。カルディナ様にご執心ですか?」


 冷やかしに若干イラつく表情を浮かべるコルセイがオルタナを鋭く睨みつける。しかし、嫌味の無いあっけらかんとしたオルタナの笑顔を見て、コルセイはすぐにその表情を元に戻す。


「隊長の名前カルディナって言うんですか?」


「カルディナ・ディ・ヒエルナよ。年齢不詳。出身不詳、ちなみに恋人もいるかも分からないわよ」


「いや、だから違うんですって。んっ? ヒエルナって。えっまじで。王族なんですか?」


 ランドルフはコルセイの肩を抱き込むと顔を近づけ、誰にも聞こえないように耳元で囁く。


「遠縁で直積的な関わりはないみたいよ。じゃなきゃ、私達と一緒にドンパチやってるわけないからね。ほら、我等が隊長殿がこっちにきたわよ。自己紹介と助けてもらったお礼しっかりね。知ってると思うけどめちゃくちゃ怖い人だから」


 こちらに気付き不機嫌そうに向かうカルディナ。三人の近くまで来るとカルディナが着席する前にオルタナとコルセイが勢いよく立ちあがる。


「はじめまして! 先程入隊致しましたコルセイです。今後ともよろしくお願い致します。先程の戦闘では危ない所ありがとうございました!」


「貴方、さっきの新人ね。良かったわね、死ななくて。お礼は言わなくていいわ。言うならランドルフに言いなさい、貴方達を守ったのはランドルフなんだから」


 カルディナの冷たい対応にコルセイがランドルフをみるとウインクで返される。カルディナは続いてオルタナに顔を向ける。


「隊長。お疲れ様です。先程はありがとうございました」


「オルタナ、相変わらず顔だけはいいわね。少しは強くなったのかしら?」


 相変わらずの辛辣さ具合にオルタナは苦虫を噛んだような顔を浮かべる。


「それよりランドルフ。ちょっと話があるのこっちに来てくれる?」


 ランドルフと隊長は席を立つとカウンターに向かい、何やらこそこそと話始める。コルセイは今後の仕事を踏まえ親睦を深めようとオルタナに声をかける。


「やっぱりうちの隊長殿は怖いですね……。可愛いけど。オルタナさんは隊長とはどれ位の付き合いなんですか。」


「んっ? 俺だって隊に入って一年もたってないぜ。そういえばオルタナさんってのはやめてくれよ。もう一緒に死線を超えた仲だ。オルタナでいいぜ!」


「あ、じゃあ、オ、オルタナ。宜しくお願いします」


「これからの戦闘でお互い命を預ける事なる。これからよろしく頼むな」


「宜しく頼みます。オルタナ」


 オルタナに差し出された手をコルセイが握ると、眩しい笑顔を向けられる。


「まぁ。こんな事言っといて何だけど、お前が今後どれだけ騎士団を続けるかはわからんけどな。できれば末永くお付き合いして頂きたい」


「えっ? それってどう言う……?」


「俺が入って約一年、俺の同僚となったのは十八人目だ。残った奴はいない、お前はどんだけ続くかな?」


「えっ?」


 嫌な予感がする。短い人生ではあるがこういう時の自分の勘は当たる。背後を振り向くとそこには麗しの隊長殿カルディナが満面の笑みでコルセイに視線を送っている。カルディナは視線を逸らさずにそのまままコルセイの前まで歩いてくる。


「明日の朝一でデートしましょう。遅刻しないように!」


 今までの対応は一体何だったのだろうか? そんなことを考えつつ、カルディナが始めて見せた笑顔はコルセイを心底不安にさせるのであった。


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