第二章 第2話 黒狼傭兵団
「ぐっはははっ!」
ガーランドは怯えている部下をバシバシ叩くと嬉しそうにコルセイに話しかけた。
「なるほど! なるほど! そうか、お前ネクロマンサーか! 俺も初めてみる!」
「えっ! 違ぅ――」
「いや、言わなくてもいい! ヒエルナからネクロマンサーとはこれは笑える。確かにその兵装はヒエルナの装備だ。んで、処刑されて大水脈を流され、運良くここに打ち上げられたわけだ」
言葉を遮られたコルセイであったが、ガーランドの勢いに言葉を挟むことが出来ず、そのまま黙り込んむ。
「ガッハハハハ。ヒエルナにネクロマンサーが居られるわけないもんな。あの大水脈を通って生きてるの人間も初めて見た。運がいいのも良い。よし、気に入った! お前、俺の隊に入れ!」
「……? えっ嫌です」
突然の事にあっけにとられるコルセイ。
「まあそう言うな、大方ヒエルナに戻ろうと考えているのだろう? けど、そりゃ無理な話だ。地下水脈を戻る事は出来ない。かと言ってお前あの山を越えるか?」
ガーランドが指差す先には雲に隠れ、頂上の見えない山が広がる。
「あの山はピレシー山脈といってなヒエルナに戻る唯一の道だ。山を越えるだけなら奇跡的に超えられるかもしれない。しかし、山の頂上付近はブリザーブドドラゴンの住処だ。劣等種とはいえお前にブリーザブドドラゴンが倒せるのか?」
ヒエルナに戻れないと言われ、一瞬めまいがする。頭を手で押さえ、気を取り直すとガーランドのデリカシーのない発言に腹を立てコルセイは始めて強い口調で声をあげた。
「たとえ、帰れないとしても山賊の仲間に入るいわれはないですよね? 縄を解いて下さい」
「山賊だぁ!? ……確かに入るいわれはないな。ただよぉ」
ガーランドは曲刀を振り下ろしコルセイの縄を切り落とすと、そのままコルセイに曲刀を突き付けた。
「ただで返す訳にはいかねぇな。俺に勝ったらここから出てっていいぜ! おい、誰かこいつに剣を渡してやれ!」
ダレスが縄を解き、無言でコルセイに剣を渡す。普段使いの剣とは違い少し大振りの剣ではあるが使えない事はない。ガーランドと距離をとると、少し離れた場所でコルセイは剣を構えた。
「おいおい、死にたいのか? お前だけで俺の相手が務まる訳ないだろう? そのデカ物を前に出しな」
「スケさんで手加減をする事は出来ない。貴方を殺しても無事に解放して貰える保証がない」
「殺す? ガッハハハハ。俺をか? 馬鹿かお前? 良いだろう保証してやろうじゃないか! お前も負けたら俺の物だからな。文句はないな」
お互いに睨み合い空気が張り詰める。先に動いたのはコルセイだ。後方より、リュケスがガーランドに向けて斬りかかる。ガーランドは剣の腹でリュケスの剣を真正面から受けると剣圧で上半身が縮む。全身の関節と筋肉をバネにように使い剣で受け止めているが、表情に余裕が無いことがわかる。
「ぐっ! デカイだけのことはある」
ガーランドがリュケスに掛かりっきりになると、その後方の低い角度からコルセイが剣を突き上げる。ガーランドはリュケスの剣を横に払うと、コルセイを軽く躱し、そのままコルセイの脇を蹴り倒す。
「術者は未熟だな!」
蹴り倒されたコルセイにガーランドが剣を振り上げる。しかし、コルセイは地面の土をガーランドに向け投げつけ、怯んだ隙に体勢を起こすとガーランドに対し、剣を構え直した。
「……未熟だが度胸はある。お前やはり俺の隊に入れ。そのデカ物も使いこなせれば百人長も夢ではないぞ」
コルセイは無言で答えると、リュケスを前方に出し、その後方でガーランドの動きを見張った。
「やはリ無理か。まあ勝てば俺の物だ気にすることはないか。お前ら少し借りるぞ」
一瞬であった。ガーランドをリュケスの後ろから眺めていたはずだった。しかし気づいたら目の前にガーランドがいた。ガーランドは体勢を少し下げるとそのままコルセイの腹を膝で蹴り上げる。胃の内容物が込み上げ、痛みと共にコルセイはゴロゴロと地面を転がり、再び鋭い蹴りが入ると、やがて意識を失う。
「何だ寝ちまったのか? ガッハッハッハ!」
愉快に笑うガーランド。しばらくすると何かを思い出したのかコルセイ髪を持ち、頭を持ち上げる。
「そういえば、俺たちは山賊じゃねぇ。黒狼傭兵団だ。覚えとけ!」




