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第一章 第30話 コペルニクス


 うつろいの森侵入時まで遡る。


 仕立ての良い上下の礼服に全く似合わない厚手の白いブーツ、頭部には探検に特化したピスヘルメット。男は不服そうにコルセイ達の後方に佇んでいる。道のど真ん中に立つような事はしないが、明らかにコルセイ達の視界に入ってもおかしくない場所である。


男はこれまた礼服に全く似合っていないゴーグルをかけているのだが、このゴーグルがレリックであり、強い認識阻害を持つ。ただし、人に特化している為コルセイ達に効果はあるものの、魔物や動物には効果がでづらいという、うつろいの森向きではないというデメリットもある。


 男の名前はエル・コペルニクス。異端審問官二等調査官である。ヒエルナの治安を脅かす者を見つけ、捕らえ、更正させる、神より与えられた仕事であると疑う事ないという人種が集まった異端審問官の中で、さらに模範となるようなエリートである。彼等は自分達の組織と神のみを信じ、行動しているため、基本的には他者の指示に従うような事はない。しかし、今回は特別に反王族派の横槍の為、渋々コルセイ達を調査をしに来ているのであった。


「あのワルクーレという貴族、いったい何様なのだ。神の使者と言われる王族に疑いの目を向けるとは! しかも王族直属の我々を使って捕らえさせようという魂胆が実に嫌らしい。大方、変わり者のカルディナ様を理由に王族の権力を削ぐのが目的だろう。さっさと終わらせて調査報告をワルクーレに叩きつけてやる」


 異端審問官の反王族派の不信感は根強く、今回の調査も異端審問官が動く事はあり得ないものであった。しかし、ワルクーレの異端審問調査依頼とほぼ同時期に、市民よりカルディナ一向に『悪魔がいるのでは?』という目撃情報が入ってしまい、異端審問官としても動かざるえない状況となってしまったのだ。その乗り気しない調査に対し、白羽の矢が当たってしまったのがコペルニクスである。


「今回の調査はカルディナ様の部下二人としか聞いていない。あの鴉頭と前傾の小人? ポーターだろうか? 同行者に申請は不要ではあるが……。まぁ調べてみればわかるはずだ」


 コペルニクスは距離を保ちつつ、コルセイ達の後を追う。魔物を倒しながら進むコルセイ達に特にこれといったところも感じない。先行する男は確か貴族崩れのオルタナ、魔物や障害物を把握し後方を上手いこと誘導している。後方にはあの鴉頭。どこかで見たことあると思ったらあの道具屋の婆さんの一族か。金を払って同行しているのだろう。


 そして、魔物と戦っているあの二人、茶色い髪のあいつは新入りのコルセイ。それでもう一人のあいつは……。どこかで見た事あるような気がするのだが。あのマスクからして鴉頭の仲間かそれとも……?


「んっ?」


 足に何か硬いものが当たる。背の高い草の陰から硬い何かが出て来る。


「墓石?」


 鳥の羽ばたく音と同時に、右方向よりこちらに向かう大きな何かを引きずる異様な音。コペルニクスの前に巨大な影が立ちはだかる。


「うっ! うぉぉーーーー。なんだこれは!」


 今までに見たこともない巨大なスケルトン。図太い背骨を引きずる音が、あの異様な音を出しているようだ。コペルニクスの横手には人が通れるような道はない。が、構う事なくスケルトンはこちらに向け一直線に迫ってくる。前方に逃げればコルセイ達にさすがに気づかれる。コペルニクスは渋々元来た道を全速力で戻る。


「こ、こんな奴が出るなんてき、聞いてない!」


 瞬く間にコペルニクスに迫る巨大スケルトン、後ろからはカタカタと不気味な音が鳴り響いている。あと、数メートルも近づけば確実に踏み殺されだろう。


「クソ、クソ、こんな所で」


 コペルニクスが心の中で故郷の家族に別れを告げた瞬間。突然後方が静かになる。


「――っ! どういう事だ?」


 コペルニクスが振り返ると、今来た道を凄まじい勢いで走り去って行く巨大スケルトン。訳が分からないが、コペルニクスの命は助かったようだ。


「助かった」


 小さく息を吐き出すコペルニクス。しかし安堵したのも束の間。数時間後には縛りつけられた巨大スケルトンと再び遭遇し、コペルニクスはまたもや命の危機に晒されるのであった。


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