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最終章 第3話 匂いの先には?

 

  遺物(レリック)で作り出したと考えられる壁の幻影をルピシアが見破り、二人が牢獄内へと侵入する。侵入した場所は階段の踊り場だ。壁際に設置された螺旋階段は地下深くへと続き、所々ではあるが壁掛けランプが設置されている。


 しかし、壁に掛けられた光量だけでは螺旋階段の先の地下へ続く道を見通すことはできない。


 時折、奇声を上げる者や鉄格子を激しく揺らす者がおり、地下から吹き抜ける風も相まって五月闇の牢獄は地獄の入口のような雰囲気を醸し出している。


 周囲に敵がいないのを確認すると、ガイブの鼻に従って地下へ続く階段を降りて行く。階段は幅広でしっかりとした作りであるものの、穴の中心側には手すりはない。底の見えない闇の中にうっかり落ちれば、間違いなくあの世行きであろう。


「ウム。確かにここにオリビアはいる。スンスン……匂いはこの先に続いている」


 鼻を鳴らしながら進むガイブにルピシアが続くと、その先は一つの牢獄に繋がっているが、牢の中は誰もいない。改装されているのか扉が設置されており、見張りの控室として使われているようだ。


「牢を改装して控室にするとは。こんな部屋で見張りは心が休まるのかね? それにしても変わった作りだね……あの噂、本当なのかもしれないね」


「噂?」


 ルピシアは恐怖を紛らわせようとしているのか、はたまたこの牢獄に興味がわいたのかは不明だが、ガイブに対して鼻を鳴らす。


「ここはね。元々ダンジョンを元にして作られているっていうんだよ。それもただのダンジョンじゃない。始まりのダンジョンと呼ばれている。ここから全てのダンジョンの始まった……という噂さ」


「始まりか。サンアワードで初期のヒエルナを見てきたが確かに謎多き国ではあった。ここまで来ると何があっても不思議ではないな」


「この先に何があるかなんて私はできるれば知りたくないね。さっさとこの先にいる二人を救出してこの薄気味悪い場所を離れるよ」


 兵の控室に着いたルピシアが床に向かって何かを投げる。どうやら小さな金属のような形をしており、地面に触れると何体かに別れ、左右に足のような触手を伸ばす。金属はムカデのような動きをしながら暗闇の中へと走ってゆく。


「道は左右に分かれているようだね。右手には数人の兵士。左手には今のところ誰もいないようだね」


「それは都合がいい。オリビアの匂いは左手に続いている。匂いの元までそう遠くないはずだ」


「奇遇だね。カルディナ様もこの奥にいるはずだよ……それにしても」


「――そうだな。誘われているようだ」


「……例え罠だとしても何かしら掴むまでは撤退はないよ」


 二人は遺物(レリック)が示す方角へと進む。道は暗く入り組んではいるがほぼ一本道であり、特に罠らしきものも見当たらない。道はやや下っており、その傾斜は進めば進むほど急になってゆく。


「ここだ。この先に間違いなくオリビアがいる。……何者かと一緒だ」


「私の情報に間違いがなければカルディナ様もだよ。別々に囚われた人物がこの場所にいるという意味は……」


 通路の行きついた先には扉が一つ。その先から放たれる敵意にガイブの毛が逆立ち緊張している様子が窺える。


「行くぞ」


 ガイブとルピシアが警戒して扉を開ける。


 ――その先には全身を拘束され、目隠と猿ぐつわをされ椅子に座らされているオリビアと、こちらを待っていたかのように佇む絶世の美女。桃色の髪に真っすぐな鼻梁は高貴さを感じさせ、ややつり目の大きな目と小さな口は小悪魔的な魅力を感じさせる。


「やはり、ルピシアだったのね」


「カルディナ様! これは一体?」


 オリビアは身動ぎ一つできない拘束であるのに対し、囚われていると聞いていたカルディナの服装は、フルプレートを身に着け右手には馬上で使用するようなランスを持つ。目には力強さが宿り、言葉こそルピシアに向けられているが視線はガイブに向いている。


「どうもこうもないわ。察しの良い貴方がこの状況を理解できないわけないでしょ? さあ、こちらにいらっしゃい。それともその横に立つコボルトを貴方が拘束してくれるのかしら?」


「あ、私は。こんな……」


 どのような状況でも決して怯むことのないルピシアの戸惑い。当初は嵌められた感じたガイブもこの状況がルピシアの予想を超えた事態だと把握する。


「ガイブ……違う。私は……」


 ガイブは何も答えない。手には腰に掛けたポーチを開いて取り出した赤色の容器だけである。


「何かあった時にはナンナを頼むぞ」


 ガイブはカルディナから視線を外さずに容器の先の針を首筋へと突き刺した。


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