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第一章 第28話 小部屋へ


 黒外套を先頭にそのすぐ後ろにはコルセイ。アヤカとオルタナ、箱に入ったゴブはスケさんに運ばれながら後ろに続く。ダメージを感じさせない黒外套はオルタナを人質にしてアヤカとコルセイを殺す事もわけないように感じる。しかし、コルセイは黒外套の言葉を信じるしかない。できることといえば、警戒を怠らないことくらいだ。


「そんなに警戒しなくても裏切ったりしない、こちらにも考えがあっての事だ」


 オルタナの呼吸は浅く、先程から言葉を話すことはない。よく見れば汗にまみれた顔は血の気が完全に引いている。


「心配しなくても小部屋に着けば助かる。約束は守る」


「わかった。それで聞きたい事とはなんだ?」


「その使役している魔物はどこにいたのだ?」


「外の墓を守っていたように見えた。墓に近づくとこちらを襲ってくるんだ」


「はっはっはっ! そうか、墓を守っていたのか。灯台下暗し暮らしとはよく言ったものだな。いや、ここに縛られてていた私が言うのも変な話か。そうか、それでその魔物に意思はあるのか?」


「たぶん意識はない。ただ時々スケさんの生前と思われる意識がビジョンとなって見える事がある。それでわかったのがここの建物だ」


「なるほどな。ここに来たのもその魔物の意思と言うわけではないのだな」


 コルセイとの黒外套が戦闘を繰り広げていた場所を超え、路地を超えると、小部屋の前のせり上がりが見えてくる。


「今でこそこの部屋の位置がはっきりとわかるだろうが、この小部屋を、あの瘴気の中、見つけるのはなかなか大変な事だ。その男が助かったなら褒めてやるがいい。さて、この先にお前たちが求めたものがあれば良いが。いや、それよりもその男の治療が先だな。扉を開けるぞ」


 金属でできた扉は錆びる事もなく、不自然に黒光りしていた。スケさんは体が大きく入る事ができない為、部屋の外に待機。黒外套に続いてコルセイがオルタナを抱えて扉に入り、続いてアヤカが中に入る。


 室内はビジョンで見た部屋そのままであった。壁側には何らかの機械があり、中央奥の機械に金属のパイプが繋がっている。パイプは複雑に絡み合い、途中様々な機械を経由して繋がっている。黒外套は部屋の中心地に近いところで立ち止まると、薄汚れた棺桶を指しコルセイに向けて指示を出す。


「そやつをここに寝かせろ」


 棺桶の中には特に何かある様には見えない。コルセイはオルタナを棺にそっと置くと黒外套に目線を移した。


「お前が持っている剣を貸せ。疑っている時間はないぞ。この男に助かって欲しいのだろう」


 コルセイは躊躇しながらも黒外套の拘束をショートソードで外すと。そのままショートソードを手渡した。黒外套はショートソードを受け取ると自身の左手を前に出す。そして力を込めると自分の右手で自分の左手を斬り落とした。無くなった腕の先から出る夥しい量の黒い液体はオルタナに流れ落ちる。


「おい。何をやってる!」


 コルセイは思わず手を出しその行為を止めようとする。


「黙ってみておれ、どうせ救う手立てはないんだ。このまま見ていれば確実に助かる。……姿形はもしかしたら変わるかもしれないがな」


 敵意とも受け取れる発言にコルセイが黒外套に向け飛びかかろうとした瞬間、後方より悲鳴が上がる。


「コ、コルセイ。スケさんが! スケさんが」


 扉の外では待機していたはずのスケさんが尋常ではない様子で横たわっていた。


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