第六章 第50話 ホワイトドラゴン
また、しばらくお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
名前の冠に色があるドラゴンは絶大な力をもつ。ワイバーンや小型のドラゴンなどとは一線を画し、知性を持ち、多言語を話す。一部のドラゴンは国を治めていたりするという噂もあるほどだ。その色を持つドラゴンの中でもひと際魔族を嫌い勇者に肩入れするドラゴンがいた。そう、コルセイたちを過去に送り飛ばしたホワイトドラゴンである。
ランドルフとナンナと一頻り話したホワイトドラゴンは、少し離れた窪みでとぐろを巻くと、目を瞑り思考の海に潜っていた。
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私は先代のホワイトドラゴンから生まれたばかりだ。通常の生物とは違い、先代までの記憶を受け継いでいる。先々代のホワイトドラゴンが勇者と聖女に命を救われて以降、ホワイトドラゴンは常に勇者と聖女の為に知恵や力を授けてきてきた。もちろん、私もその影響を受けている。
特に先々代のホワイトドラゴンは勇者と共に戦ったこともあり、先々代の記憶を辿ると、生まれたばかりの私でさえ胸に熱いものが込み上げる。そろそろこの世に新たな勇者が現れるはずだ。次にこの山に登り私の前に現れるのは勇者かもしれない。
しかし、私の目の前に現れたのは絶たれたはずの魔王の因子を受け継ぐ気味悪い男であった。
コルセイは魔王に成る素質を秘めている。しかし、本人はその可能性どころか自分が何者であるかさえ分かっていない。
共に連れてきたのは女は聖女の第一候補であり、コルセイは娘と将来を近いあっているという。悪の化身と聖の象徴が伴侶になるなど聞いたことがない。共に旅をする者たちもコルセイと関わらなければ歴史に名を残す可能性が高い者たちばかりだ。私はコルセイ一行を見た時から激しい怒りを覚え、我を忘れそうであった。
一行は何故かコルセイに絶大な信頼を置いており、私は間違いをただすべく年に二度しか使うことしかできない時空魔法を即時に発動することにする。特にコルセイの影響が色濃く出ているコボルトのガイブと聖女候補のオリビアを過去に飛ばした。歴史に影響を与える可能性はあるが今は由々しき事態である。
「さて、行くか」
時空の演算を終えた私は今日二度目の時空魔法を発動させる。コルセイは巨人の王、もしくは勇者に殺され、オリビアとガイブの目も覚めたであろう。戻ってきた際には二人の道しるべとなり私が二人を導かなくてはならない。
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ホワイトドラゴンは体中から膨大な魔力を噴き上げると、その魔力を一気に術式に組み込む。空中に浮かぶ術式は文字の形を変えは消え。再び書き込まれては消える。その速度は気分が乗った作家が万年筆でかき上げるようだ。術式は魔力をねじ込み、留まることなく展開していく。
やがて、ホワイトドラゴンの魔力は風を巻き上げ、暴風を巻き起こす。岩に必死にしがみつくナンナをランドルフが両手で抱え込むと、ドラゴンの魔力は空中に向かい一斉に発射される。そのエネルギーは空を駆け上がり、雲を突き破り、大気圏を超えてゆく。
やがてぽっかりと開いた穴には星空のような空間が現れ、空間は飴細工のように規則性をもって歪んでゆく。やがて歪みは空間に引き伸ばされ、一瞬の輝きの後に、空間の先は曇天の空へと繋がる。
ホワイトドラゴンは曇天の空を満足そうに確認すると、背中に生える巨大な二枚の翼を伸ばしゆっくりと羽ばたきを始める。その羽ばたきが再びランドルフとナンナを暴風に巻き込もうと思われた瞬間、ホワイトドラゴンのとんでもない質量が空中へと飛び立つ。
「ランドルフ! ホワイトドラゴンが!」
ランドルフに支えられたナンナは自分の両手で庇を作ると、光の輝きの中へと雄大に飛び立つ姿ホワイトドラゴンの姿が見えなくなるまで見送り続ける。
「ランドルフ。コルセイたち大丈夫かな?」
「分からないわ。でも無事でいて欲しい。私達には何もできないけど三人の無事を祈りましょう」
ランドルフとナンナはホワイトドラゴンの術式が解かれ、その空間が閉じるまで、コルセイたちに祈りを送り続けた。




