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第六章 第41話 闘気解放

 

 ブラッスリーにより【ダークウェスティ】の付与がかかり、コルセイが闇のオーラを纏う。同時にコルセイに肉薄するエグスメント。コルセイは両腕のショートソードをクロスして何とか長刀を受け止めるが剣圧に耐えきれず膝を曲げる。


(グッ。受け止めるだけ精いっぱいだ!)


 コルセイはエグスメントの次の一撃を阻止するべく両手で長刀を抑え込むと、その僅かな隙を狙ってブラッスリーがエグスメントの心臓目掛けて突きを繰り出す。


「フッ」


 エグスメントは軽業師のごとく右足のみを垂直に持ち上げると不可視の角度からコルセイを蹴り飛ばし、蹴り飛ばしたコルセイを盾にしてブラッスリーの突きを回避する。


「くっ! なんという体をしてるんだ。しかし――」


 コルセイ、ブラッスリーと攻撃をいなし続けたエグスメントだが、鉄壁の防御にわずかな空白ができる。そのすきを狙いガイブが全力の突きを繰り出す。


「オォォォォォ!」


 ガイブの連打がエグスメントを襲う。右ストレート、左わき腹突き、回し蹴り。ガイブの豪腕がエグスメントを捉えるたびに分厚いゴムを殴りつけたような音が振動となって空気中を伝わる。


 ガイブの連打が勢いを増し、少しずつエグスメントが宙に浮くとその背後からコルセイの二刀がさらなる追い打ちをかける。


「容赦がないな」


 顔面に拳が、胴に蹴りが、喉に爪が。紙一重で躱していたはずのエグスメントの肌が薄っすらと紫に染まっていく。


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 コルセイの連撃も勢いを増してゆく。胴薙ぎ、喉突き、袈裟懸け。鎧の金属にコルセイの斬撃が触れ小さく火花が生まれる。


「オッラァァ!」


 四本の腕から繰り出される鋭い攻撃を躱しきれずに、ついに右脇腹にガイブの一撃が撃ち込まれる。


「――ッ!」


 初めて見せるエグスメントの苦悶の表情をコルセイは見逃さない。背後に回り込み、右腕のショートソードを首元に杭のように突き刺す。鋼のように鍛えられた僧帽筋に少しずつコルセイの剣が食い込んでゆく。


【闘気解放!】


 援護で駆け付けよとしていたブラッスリー、肩口に食い込んでいたコルセイの剣、ガイブの蹴りが一瞬で弾き飛ばされる。コルセイたちがゴロゴロと吹き飛ばされ身体を地面に強く打ち付ける。


「くっ。な、何が」


 やっとのことコルセイは顔を上げ、視線をエグスメントに向けると全身の傷から蒸気が上がっており、瞬く間に傷が塞がっている。


「悪くはない。しかし我と剣を交えるには【まだまだ】と言っておく。我を倒すにはお前たちは三つほど壁を越えなくてはならない」


 三人の連携をいとも簡単に潜り抜け、余裕の態度を見せるエグスメントに恐怖を感じる。エグスメントをここで倒さなければ、ヒエルナの力を行使するオリビアは確実に殺されてしまうだろう。僅かな剣を交えただけで常人では到達できない域にエグスメントが達していると分かる。


「ハァハァハァ」「フゥフゥ」


 先ほどまでの戦いでこちらの体力はすでに半分ほど消費している。ガイブに至っては薬の効果が切れたのか呼吸が荒くなってきている。それに対しエグスメントは、戦闘などなかったように平然としている。


「先ほども言ったが今はお前らに興味はない。大人しく去るなら見逃してやる」


「……貴方が尋常ではない強さを持っているのは分かった。できれば俺たちもこれ以上は戦いたくない。しかし、俺たちも仲間の命がかかっている。引くわけにいかない。もし、仲間も見逃してもらえるなら、俺たちも貴方がしたいことをこれ以上邪魔はしない」


「仲間を見逃すか。我にそこまでする義理はないが……。仲間か、我にもかつては信頼を置いた仲間や我を慕う部下もいた。よかろう、その仲間がどこにいるかは分からんが話をしてくるが良い。一時、待ってやる。それでも答えが出ないようなら我は自分の目的のために勝手に行動する」


「感謝する」


 エグスメントは長刀を地面に突き刺すと両腕を組み仁王立となる。コルセイはエグスメントに小さく頭を下げると息の粗いガイブの肩を支え、急いで城へと戻った。


 ※※※


 バルコニー付近の敵を一掃し、アヤカの元に戻るキートン。状況が確認できず、やきもきとしているアヤカがキートンに掴みかかる。


「戦況はどうなっているんですか!? レリックを使っても密度の高い魔力が邪魔してコルセイを確認することができません」


「ごめんアヤカさん。何が起きているか分からないんだ。俺もイザベラと通信が取れなくて心配してるんだ」


「そ、そうですか。捲し立ててすみません。あなたもイザベラを心配してるのに、私は……」


 アヤカはイザベラと共に飛び立っていったコルセイを思い返す。久しぶりに顔を合わせすぐにいなくなってしまったコルセイ。無理を言ってでも着いていくべきだっただろうか? アヤカが不安な表情を浮かべているとキートンがアヤカの不安を取り除くべく朗報をもたらす。


「アヤカさん大丈夫。コルセイもガイブさんも生きてるよ。それに――」


「それに?」


「オリビアがもうすぐここに戻ってくる」


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