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第六章 第29話 神槍

 

 オリビアが赤い光と共に消えると同時に台座が輝きを失う。アヤカは台座を後に扉を開けるとその先には今までと変わらない笑みを浮かべたリーフが待つ。


「オリビアは行ったのね」


「行く? オリビアは消えました。どこへ消えたか知ってるんですか?」


「たぶん……神に会ってるんじゃないかしら」


「……神?」


「後でオリビアに聞きなさい。さあ、行きましょう。オリビアが何を成そうとしているのか? 貴方も見たいでしょ?」


 アヤカは無言で頷くとリーフの後について行く。


 リーフは何もない壁際に向かうと無造作に壁に手を当てる。すると、先程まで何もなかった場所に取っ手が現れ、その取っ手を手に取ると壁の一部が音を立て動く。目の前に現れたのは城下町を一望できるバルコニーであった。


「眺めがいいでしょ! ここからなら戦いを最後まで見ることが出来るわ」


 神殿最上階から見える景色は辺り一帯を見渡せる眺めである。城を囲む大森林、ピレシー山脈からサンアワードまで続く街道。森からこちらに帰還する僅かな兵も見える。


「来るわ」


 呟くようにリーフが言葉を放つと大森林の果てからこちらに向かう黒い点が見える。点はみるみる内に大きくなると城の本丸に向けて迫って来る。やがて視界に入ってきたのは昨日と同じ鉄柱である。小刻みに振動しながらまた一つ城壁に鉄の柱が生える――かとおもわれた。


「あっ!」


 本丸部分に鉄柱が直撃する瞬間。一つの光の筋が鉄柱に衝突する。金属と金属のぶつかる激しい音が鳴り響くと、鉄柱は大きくその軌道を逸らし城外へと叩き落される。光は上空にしばらく留まると徐々にその光を失いゆっくりと落下していく。


 光を失いその姿があらわになるとそこには槍に騎乗する白い神官服を纏った子供がいた。


「あれは!」


 アヤカはあの光の正体を知っている。超高出力で有人の槍を発射し、敵を殲滅する兵器【神槍】である。やはりここは昔のヒエルナで間違いないようだ。リーフの自信はこの【神槍】だったのだ。確かに【神槍】であればこの絶望的な状況を打破できるかもしれない。


 巨人が投げたと思われた第一投を皮切りに場外からは鉄柱や大木が投げ込まれる。いずれの鉄柱、大木も先を削られ殺傷力を増した剥き出しの槍である。しかし、その無数にも思える投擲は城に当たることはない。上空に次々と打ち出される【神槍】がその飛来物を正確に捉えて城外へと弾き飛ばしてゆくのだ。


「素晴らしい! 子供達の働きは想像以上だわ!」


「子供達?」


「そう。神に愛された使徒候補の子供達。神槍を制御できるのは選ばれた人間だけ。威力、精度共に申し分ないわ。神槍と子供達がいる限りこの城を落とすことはできない!」


 どうやらあの槍を操っているのはヒエルナ教の子供達のようだ。そういえばカルディナも槍に騎乗していた。もしかするカルディナもリーフの言う使徒なのかもしれない。


 昨日は無抵抗に投擲を受け続けていたサンアワード。しかし昨日とは打って変わって投擲される槍が城を傷つけることはない。巨人による投擲と【神槍】の衝突は三十分ほど続く。アヤカが見る限り【神槍】を突破して城に直撃した鉄柱は今のところ一本もない。


 【神槍】と鉄柱の攻防がしばらく続くかと思われたが突如として投擲が一斉に止まる。突然の事態に皆、驚いているがもちろんこれで終わりのはわかっている。これから何が起きるのか? サンアワード全ての者が固唾をのんで見守る。


 ――大森林の鳥という鳥の全てが一斉に上空へ飛び立つ。大森林に聳えたったのは城と見間違えるほどの巨大な人。その左右には二回りほど小さな巨人が数人。それぞれの巨人の腕には無数の巨人が縄でぶら下がっているのが確認できる。


 ドッッ!


 中央の一番大きな巨人が大地を踏みしめると全ての巨人が城に向かい一斉に走り始める。縄でぶら下がっている巨人も随時地面に着地し、すぐさま城壁へと走り込む。巨大な波を思わせる巨人の列は到底生き物とは思えない莫大な質量を持ち、そのエネルギーはサンアワードの城に地響きとなって伝わる。


 昨日の巨人の攻撃により痛んだ城壁のあちらこちらで城壁が崩れ一部では悲鳴が上がり始める。


「遂に現れおったな臆病共め!」


 バルコニーまで響く怒声をあげたのは会議の時に憤っていた将軍の一人であった。ありったけの攻城弩(バリスタ)を迫り来る巨人に向かい標準を定める。中庭を見れば投石器も用意されており、目一杯引かれた縄は今にも引きちぎれそうである。


 一方、巨人の波は勢いを落とすことなく城壁に向かい突進する。巻き起こされた土煙も相まって山からなだれ落ちる土石流のようである。


「凄い」


 アヤカの口から自然と言葉が漏れる。普通の人間が目にするこのないエネルギッシュな光景に背中に鳥肌が立つのが分かる。城壁の将軍が緊張した面持ちで振り上げた手を落とす。


「殲滅せよ!」


 城壁弩と投石器が一斉に発射される。空気を震わせ無数の弩と岩が巨人に向かい凄まじい勢いで迫っていった。


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