第六章 第2話 街道沿いの森
話あった結果、ヒエルナに見える城に向かうのはアヤカとオリビア。森に残る者をガイブとコルセイとした。
ガイブは魔物である、流石にこのままでは街には入れない。コルセイに関しては高確率で異端審問官よりヒエルナに手配をかけられているのを懸念してである。
「では行って来ます。くれぐれも目立つ動きはしないように」
「分かった。二人も気をつけてね」
「とりあえずお婆さまのところに戻りたいと思います。準備ができ次第、迎えに来ます」
「オリビア。街の感想後で聞かせてね」
オリビアは小さく頷くと二人は街道伝いにヒエルナへと向かって行った。ガイブとコルセイは最初こそ街道の観察などをしていたが人通りは少なく腹も減って来た為、森に入り何か食べ物がないか探し始める。
「よしっ! コルセイ猪だ!」
狩りに出かけ一時間も立たない内にフォレストボアを狩ってくるガイブ。爪で皮と内臓を掻き出すと肉に齧り付く。
「ほら、コルセイも食え」
「いや、食べれないよ。火を通さなくては人間は肉を食べれない。知ってるだろう?」
「そうだったか? 美味いのに」
ダンジョン内で厚い寒いで揉めたことがあったが、ガイブのこういうところは相変わらずである。コルセイは美味そうに肉を食うガイブに苛つきながら食べれる物を探しに再び森の中に入っていく。
二股狼の鼻を頼りに何か食べれる者がないかと探しているとある異変に気付く。森の中を走る数名の足音。一人が前を走り、後ろから数人の男が走っているように聞こえる。
コルセイはどうしようかと考えたが巻き込まれるのを恐れ木の上に登ると息を潜め、走る者達がそのまま過ぎるのを待つ事にした。
最初に走って来たのは少女であった、少女は背中に籠を背負い全力で森の中を駆けている。どうやら街道にでようとしているようだ。しかし、息を乱しそろそろ限界が近そうである。そのすぐ後ろには野卑な笑みを浮かべた二人組の男。男の一人は縄を持ちこの後少女がどのような目に合うかは一目瞭然であった。
「あっ!」
少女の足がもつれ地面を転がる。男の一人が少女の上に馬乗りになり頭を押さえ付ける。
「手間かけさせるんじゃねえよ。おい、縄を貸せ」
男がもう一人の男から縄を受け取ると手慣れた手つきで少女の腕に縄をかける。
「おぉ。なかなかの上玉だ。売り払う前に……ゲッヘェ」
男がズボンに手をかけた所で上空より二股狼が男の首に食らいつく。男は一瞬抵抗を試みるもすぐさま絶命し、地面の上に倒れ込む。縄を持っていた男も逃げようと背中を見せるがその背後より二股狼が強く押し倒すと頭を強く打ち動かなくなった。
少女は人攫いから今度は狼へとその恐怖の対象が移ると腰を後ろに下げながら涙を流す。しかし二股狼は少女を襲わない。腰を降ろすと少女を見つめている。
「大丈夫だった?」
「誰!」
少女の前には誰も姿を表さない。声だけである。
「これを使って縄を切るといいよ」
「えっ?」
木の上より少し離れたところに投げられる黒い片手剣。少女は警戒しながらもナイフの元までいくと縛られた手の縄を切り立ち上がり上を向いてお礼をする。
「どなたか存じ上げませんが助けてくれてありがとうございます」
「無事で良かった。森は危ない。早く街道に出るといいよ」
「どうして街道に行こうとしているが分かるんですか? 私それにお礼もしてません」
予想外に少女との会話が長引いてしまう。コルセイは木の上から静かに降りるとそれ以上は何も答えなかった。少女はしばらく木の上を見ていたがしばらくすると籠を拾い街道へと走って行った。
(これで俺の正体はばれてないな)
コルセイは少女が落とした昼食と見られるパンの包みを見つけるとありがたく頂く事にする。
「無事に帰れていれば良いけど」
コルセイは気を失っている男の両手両足を拘束するとブラッスリーに担がせ森の奥へと歩いて行った。




