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第六章 第1話 鏡の先には

 

 オリビアが目を覚ますと見知らぬ野原であった。特に何か異常があるわけではなさそうだ。体を起こし、周囲にを見回せす。


 近くには街道があり、山の厳しい寒さではなく、麗かな心地よさに違和感を感じる。オリビアのすぐ隣にはコルセイ。近くにアヤカとガイブも横たわっている。幸いコルセイの傷は完治しており命に別状はなそうだった。


「コルセイ! コルセイ!」


 オリビアの声にコルセイは飛び上がる。生きているのを確認すると急いで上半身を触る。


 「なっ! 俺はーー」


 傷がないことに確認し安心するコルセイ。しかし、すぐにその表情に影を落とす。


 オリビアはガイブとアヤカを揺り起こす。二人も傷などはなくただ気を失っていただけのようである。二人がゆっくりと体を起こすとそこには幽鬼のような表情をしたコルセイが申し訳なさそうに頭を地面に擦りつけていた。


「ごめん。俺のせいでこんな事になって」


 コルセイは涙を流しながら皆に詫びる。散々嫌われてきたが今回のことは相当応えたようである。下げた頭を上げようとはしない。アヤカとオリビアがなんと声をかけて良いか迷っているとガイブが軽いノリでコルセイの頭を引っ叩いた。


「いつものことだろう! 気にすることはない」


「……………でも、皆に申し訳なくてさ。俺のせいで巻き込まれて」


「気にするな。俺たちが好きで付いてきてるんだ。オリビアもアヤカもお前のことが好きだから付いてきている。俺たちの気持ちを汲むならそれ以上落ち込むな」


 コルセイは袖でゴシゴシと顔を拭うともう一度だけ謝る。アヤカとオリビアはコルセイにどのような言葉をかけるかかなり悩んでいたがこんな時はガイブのような実直な男がいると助かる。


「さて、それではここがどこか探ることにしましょう! この感覚は幻などではなくどこかに飛ばされたと考えるのが自然です。ランドルフとナンナは気にはなりますがあの様子では殺される心配はないでしょう」


「その通り。それより私達の心配をする。荷物もあちらに置いてきてしまった」


「あっ!」


 コルセイが何かに気付くと自分がいた場所へと走って戻って行く。


「無い、無い、無い、無い! あっ!」


 少し離れた所には二つの棺。コルセイがホワイトドラゴンに閃光を受けた際に近くにあった棺とその横にあった小さな棺である。


 コルセイが蓋を開け中身を確認する。その中には細身の全身甲冑のブラッスリーと化け百足にやられた下半身を修繕したばかりの二股狼が入っていた。


「良かった! でも、残りの棺はあちらか。無事だと良いけど……」


 あのコルセイの嫌われようである。もしかすればコルセイの荷物は全てホワイトドラゴンによって消滅させられているかもしれない。コルセイは再び気持ちが沈む。しかし、今は急を要する。戦力なしの丸腰でなかっただけでもありがたいと思う事にする。コルセイが棺を開けていると三人がこちらに歩いて来る。


「私達の武器もありません。ガイブは素手でいけるかもしれませんが、今、誰かに襲われれば危険なのは間違いありません」


「とりあえずここが何処か知ることが先決。ガイブはとりあえず森の中に身を隠して」


 確かに人里近くでコボルトがいれば自警団や冒険者が討伐に来るのもあり得る。コルセイもとりあえず状況を把握することを優先する。次はどうしようかとアヤカに視線を移すとアヤカはある一点を見て呆けている。


「コルセイ見てください。あれ何か分かりますか?」


 コルセイがアヤカの指差す方向を見る。そこにはあり得ない光景。なぜここにあるのか? アヤカが指す指の先には数年ぶりに見るヒエルナの城がどっしりと構えていた。


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