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第五章 第24話 闇精の悪戯


 登山を開始して数日。遠目に見えるピレシー山の頭頂部は真っ白に雪で覆われている。ちなみにヒエルナに行くだけなら頭頂部を通る必要がないため、迂回が可能である。もし、頭頂部に行くとなると氷と氷の深い溝であるクレバスがあり、はしごを使って通過しなくてはならないらしい。


「今日はこの辺でキャンプしましょう」


 各々がキャンプの用意を始める。ここ数日で誰がどの作業をするか分担がきまり、ナンナは食事、コルセイがゴブリンメイジによる地ならし兼、ドーム作り、ランドルフとガイブは力仕事、オリビアとアヤカは翌日の準備と住み分けされている。コルセイがドーム作りをひと段落するとアヤカに呼び止められる。


「本の解読が出来ましたので食後に話をしたいのですが良いですか?」


「本当に! ありがとう。念願のブラッスリーパワーアップ計画だね」


「コルセイ。そのネーミングは少しダサい」


 気兼ねない三人のやりとりに違和感はない。先日の告白以降コルセイは告白のことを考えるのをやめていた。


 どうしても山を降りた際の返事を意識してしまい、何をやるにも考えが付きまとい行動に支障をきたしていた。このままではまずいと気持ちを強引に切り替え、何も考えずに過ごすことにした。


 幸いにも登山やこれから会うホワイトドラゴン対策でやらなくてはいけない事は山積みである。


 コルセイの作戦は功を奏し今は自然体でいられる。オリビアも二人の違和感は感じていたのだろうがそこはコルセイを信じて見守る姿勢のようだ。


「青春ね」


「セイシュン?」


 ランドルフがナンナの調理を手伝いながらボソリと呟き、ナンナは不思議そうな表情を浮かべている。


「ナンナちゃんにもいずれ好きな人ができるわよ」


「ワタシガイブ好き。コルセイも好き。ランドルフも好き!」


 ナンナが満面の笑みを浮かべるとランドルフは両手でナンナの顔を挟むとマジマジと覗き込む。


「何! この可愛い生物は!」


 プニプニとほっぺを弄んでいるとナンナは今にも泣きそうな顔になっている。


「あら。私としとした事が、ごめんなさいね」


 そんなたわいもない時間を挟み料理は出来上がる。


 ※※※


 食後、焚き火を囲むアヤカとコルセイ。二人はページをめくりながらアヤカが本の解釈を伝えている。本のページはそこそこ厚みがあるが、魔法の記述に関してはその内の三分の一程で、残りはブラッスリーの生い立ちや国の事が書いてあるらしい。


「私もこの数十ページ程しか解読できていません。残りは山を降りてから解読しても遅くないでしょう。とりあえず内容を伝えますよ。まずは【闇精の悪戯(サミング)】可愛い名前ですが中々危険な能力です。まずはダンジョンの中で闇がケバケバになっていたという状態を作って貰えますか?」


 ブラッスリーのロッドの先に黒い点が現れる。黒い点は徐々に大きくなっていき、やがて黒い毛玉となる。よく見るとその毛玉は蠢いており、さらに意識を強めると強力な磁石に砂鉄をくっつけたようなケバケバしい形をとる。


「できたよ!」


「な、なんか嬉しそうですね。まぁ良いです。その毛玉はそのまま放出できないのは聞きています。一度体内で循環させ練り込んだ後に放出するのを意識して貰えますか?」


「循環? という事は一度これを引っ込めるということかな?」


 コルセイは毛玉を何とかロッド伝いにブラッスリーの体内に戻そうとするが中々上手くいかない。しばらく練習するように伝えるとアヤカはオリビアの元へと向かう。


「コルセイが今から使うデュラハンの魔法は視覚を奪う魔法みたいです。直接対象に当てなくてはならないようですが強力な魔法です。【浄化(アブゾルブ)】で解ける魔法だということを一応、伝えにきました」


 どうやら同士討ちなどの場合に解除を期待しているようだ。オリビアは首を小さく頷くと頬に手を置き考え始める。


「【浄化(アブゾルブ)】が効くという事はあれはアンデッドに属する魔法という事?」


「そのようです。使って見なければ分かりませんがコルセイのアンデッド化が進行しないか少し不安です」


「要注意」


「そうですね。気をつけましょう」


 二人が今後について話し始めた所でコルセイが大きな声を上げる。


「できた!」


 コロセイの目の前には木の実ほどの大きさの球が宙に浮いている。黒い綿毛のようであり少しだけ上下に動いているのが分かる。暗闇に浮いているのが分かるところを見ると薄っすら光を発しているのかも知れない。


「コルセイ! それに絶対触らないでくださいよ!」


「えっ?」


 間抜け声を上げコルセイが振り向くと上半身に球に触れてしまう。


「えっ? あっ? め、目がぁぁぁ!」


 人の注意を聞かないコルセイに呆れながら、オリビアはコルセイの元へと駆けて行った。


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