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第五章 第20話 靄

 

 女性陣との話し合いは思いの外長くなった。今まで自分の中だけで解釈していた能力が考えていた以上に危険だったと認識され、オリビアとアヤカからは意識同調使役について厳重注意を受けた。


「じゃあ、私達はランドルフさんに手紙のこと伝えてくるから」


 コルセイも二人に付いて行こうとするがやんわりと断られる。コルセイは腑に落ちなかったがとりあえず見張りのガイブの所に報告するべく捕虜が捕まっている建物へと向かう。


(何で俺だけ省かれたんだろう。謎だ)


 シュラフで二人程度が寝れる土壁のドームはグモードとグモルドを駆使して四人がそれなりの快適さを過ごせる大きさとなっている。部屋の外には土で作られた台もあり、食事の用意や薪割りなどの軽作業にも使える。そんな台の上でガイブとドラックは何やらしているようである。


「ウォォォォォォォ!」


「フンッ!」


 ガイブが腕に力を入れると勢いよく転がりまわるドラック。ドラックは腕を抑えて悶絶している。台の上で繰り広げられていたのは腕相撲のようである。


「どうだコルセイ。お前もやるか?」


「このメンバーだと間違いなく勝てない。女性陣といい勝負ってところかな」


 コルセイは朗らかに女性陣を見るが女性二人はコルセイを見るとドラックの後ろに隠れる。


「ヒッ!」


 特に盗賊のロスは露骨にコルセイを恐れている。そんな二人を見てドワーフのガスは申し訳無さそうに謝る。


「このような態度をとって申し訳ない。良くしてもらっているのに」


 ガスが詫びを入れると恐る恐る精霊使いのミーティが顔を出してくる。


「ごめんなさい。でも、貴方の回りに飛んでいる黒い靄が怖くて。ロスもそういうのは敏感だから怖いみたいなの、許してあげて」


 コルセイは女性に距離を取られることに改めてショックを受ける。しかし、よくある光景である。嫌われるのはしょうがないと早々に割り切る。


「もし良ければそれ引っ込めてくれないかしら?」


「ごめん。それができないんだよ。もうすぐ俺達もここを出ていく。その時に君たちも解放するからそれまで我慢して。俺も出来るだけ近づかないようにするから」


「ネクロマンサーも大変なのね。じゃあ私からも一つ。高位の精霊使いならもしかしたらその靄の正体が分かるかも知れないわ」


 思わぬ所で自分についての手掛かりを掴む。コルセイが嬉しそうな表情を浮かべた所でミーティよりさらに助言をもらう。


「私は精霊を使えるけどそこまで大きな力を使えない。だから貴方のそれが何か私には分からない。でも、私にはそれが()()()()()()動いているように見える」


「意思を?」


 リュケスが魔法を使った際に【恐怖(テラー)】として靄を使っているが、それ以外は垂れ流しで制御できない。もし、この靄が意思を持って動いているならこの状態も納得できるような気もする。コルセイはミーティに礼を言うと部屋の外へと出る。


「コルセイちゃん! ちょっと」


 ランドルフの声だ。コルセイは声がする竈門へと向かう。どうやらランドルフはナンナの食事作りを手伝いをしているようだ。


「何か大変だったみたいね」


「いえ、心配して注意してくれた訳ですし、俺も素直に話は聞くつもりです」


「なら良かったんだけど。それでね。ホワイトドラゴンの件なんだけど……」


 それ以上言葉が紡がれることはない。アヤカも頂上付近のブリザーブドドラゴンを上手くかわして山を越えるつもりだったのだろう。しかし、あの手紙によるとランドルフを一撃で倒すホワイトドラゴンが山頂付近にもいるような事が手紙に書いてあった。


「正直困りました」


「そうね。アヤカとオリビアが確認したいことがあると山を見に行ってるわ。二人が帰ってきたらガイブちゃんも呼んで皆で話合いましょう」


 ランドルフと話を終えると誇らしげな顔をしたナンナが鍋を見せてくる。先程、山で雉が獲れたので雉鍋を作ったらしい。考え事をする前に腹ごしらえも必要だ。コルセイも食事の準備に加わると三人で食事の盛り付けを始めた。


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