第一章 第18話 オルタナの指導
翌日
昨夜は復習作業は地獄であった。しかも、頭を珍しくフル回転させた為、興奮してなかなか眠りにつくこともできなかった。そんな寝不足気味の体に喝を入れ、砦近くの開けた場所にオルタナと集合する。
「で、アヤカのレッスンはどうだった?」
「実践的な事は何もしてないよ。心構えから道具の使い方まで覚える事と考える事が沢山ありすぎて正直消化しきれてない」
「こればかりは一朝一夕では身につかないからなぁ。自分で見つけてくしかない。一緒にいる間はいつでも協力するぜ」
コルセイの周りにいる女性陣とは違い、オルタナはいつも気さくで話しやすい、ランドルフもたまに裏切るが最後にはいつもコルセイの肩を持ってくれる。
「オルタナ……。やっぱり男だよな」
真顔でオルタナに向かい肩に向かい手を伸ばす。
「おっおい! 俺はそっちの趣味はないからな!」
「ん? い、いや違うぞ。俺はそんな気は無いからな。か、勘違いするなよ!」
「嘘つけ。変な気迫を感じたぞ。もう一度言うけど、俺はそんな気はないからな。さあ、さっさと始めるぞ」
気のせいかオルタナのパーソナルスペースがコルセイとやや離れた気がする。オルタナは懐から紐状のスリングを出すとコルセイに投げ渡す。
「これやるよ。安物だけど物は良いぜ!」
紐の真ん中に石の「受け」の部分を作り、くくりつけ、石を投げ飛ばす。作りはシンプルなものである。しかし、スリングを使って投げた石の威力は大人に致命傷を与える事ができるレベルである。
「コツさえ掴めば弓を習得するより圧倒的に短期間で上手くなれる! そして安い! 集団で使う時はちょっと使えないが、中、長距離でゴブを前面に出しながら使うにはなかなか便利だ」
コルセイはゆっくりと中指に輪をかけ、親指と人差し指で紐を掴み遠心力を使い石を投げてみる。石は真っ直ぐに飛ぶ事なく下から上空に向け勢いよく飛び出し、しばらくするとコルセイの少し前に小さな音を立てて落ちた。
「なあ、これ投げた方がよくない?」
「はぁ。コルセイ諦めるのが早くない? まあ見てろって」
オルタナは砦の高台にスルスルと登ると上空に向けスリングから石を放つ。ビュッと石は風を切ると、次の瞬間には空を飛んでいる鳥に当たりコルセイの前にぼとりと落ちた。
「よし。晩飯ゲットだな! とまあこんな感じだ。射程は最大数百メートル。威力は無防備な大人なら一発でいける。さっきも言った通りコツを掴めばさっき位の事は朝飯前だ。んじゃ頑張れよ!」
「朝飯前か気楽に言ってくれるよな。……まあ、ぐだぐだ言っててもしょうがないか」
コルセイは指に縄をつけ、ゆっくりとスリングを回し始めると、遠くの的目掛けて投擲の練習を開始した。
ー装備品ー
E 神殿騎士団訓練兵皮鎧
E 神殿騎士団標準長槍
E オルタナのスリング




