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第四章 第59話 大瀑布の先へ

 

「ガイブ見えたぞ!」


 視線の先には一面に広がる崖、崖、崖。彼方此方から水が大瀑布に向けて集まってきている。ガイブとの距離は近い、しかし、凄まじい水の轟音により会話が耳にはいってこない。リュケスの【骸の道(デスロード)】によって接岸すると最後の休憩兼調整作業に入る。舟の点検を慎重に二人で終えると、コルセイはリュケス、デュラハン、ゴブ、2号の最終調整。ガイブは薬の調合、防具のメンテに入る。


「要らない物はここに置いていこう。この先は少しでも軽い方がいい」


「そうだな」


 しかし実際のところほとんどの荷物はコルセイの物である。ちなみに戻れない事も考慮し二股狼の遺体は持ち歩き。護衛のゴブリンはゴブと二号しかいない。


「コルセイ、番いはいるのか?」


「つ、番い? 番いって伴侶ってことだよな。唐突だな。うーん。いる……かな」


「なんだそのにやけ顔は気持ち悪いぞ」


 オリビアを思い浮かべてうっかり顔に出てしまったらしい。確かに恋する乙女のような気持ちに一瞬なってしまった。しかし、気持ち悪いは酷くないだろうか? うっかり顔に出してしまった自分を恨む。


「お前はいるのかよ。大事な人?」


「番か? 俺は強いから子を作りたい雌はいくらでもいるだろう。いえばいくらでも寄ってくる。しかし、今は興味ない。それよりもナンナの今後が心配だ」


 確かに獣人のナンナはコボルトとでは子をなすことはできないだろう。コミュニティには上手く溶け込んでいるがナンナの将来の事を考えると果たしてそれがナンナにとって良いのかなは分からない。


「できれば俺はお前と番いになって欲しいと考えている」


「はっ? 俺とナンナが? ないだろうそれは」


「そうでもないぞ。最近はお前に懐き始めているではないか?」


 冗談で言っているのかと思いきやガイブの表情は至って真面目である。茶化すのはまずい。かといってOKなどとは口が裂けても言えない。そもそも俺に幼女趣味はない。


「なんだ気に入らないのか?」


「気にるとかいらないとかの問題じゃないんだ。そもそもコボルトと生活をするかしないかはナンナが決めることだろ? それに俺は心に決めて女がいるんだ。ナンナにはいい男がいずれ現れるさ」


「では問題ないな。一つ目の問題はほぼクリアしている。その心に決めている女とナンナを番いにすれば良い」


「おぉぉい! 人族の伴侶は一人だけなの。ダメったらダメだ」


 国によっては一人ではないところもあるだろうがここは面倒くさくなりそうだ、こういう話にしておこう。


「そうか。しかし俺に何かあったらナンナは頼むぞ」


「そうなりそうだったら逃げてくれよ。遺言は受け取らない」


 いざというときは自分の命を賭けてでもガイブを守ると心に決める。いくら恩人とはいえ、ガイブの命とコルセイの脱出を天秤にかけるつもりはない。種族は違えどガイブは仲間なのだ。


「よし。行こう!」


 ※※※


 舟のロープを切る。急流の中央に勢いよく出ると。二人でオールを使い舟を押し出す。全方向から集まる水流は激しさを増しコルセイとガイブは既にずぶ濡れである。念のため足と舟を【骸の道(デスロード)】により固定しているがこの急流である。何が起こるか分からない。水飛沫で息ができない。普段から鍛えている体幹を持ってしても水に揉みくちゃにされ自分が立っているのか浮かんでいるのかわからない程である。


 ズォォォォォォォォ


 崖の先が目の前に迫る。あと数秒でこの舟は空を舞う事になる。ガイブが最後に勢いよくオールで舟を押し出すと水流に押し出され舟は空を飛んだ。


 ゴォォォォォォォォ


 凄まじ勢いで落下する舟。風を切る音以外何も聞くことはできない。舟はロープと【骸の道(デスロード)】で固定され、荷物や仲間が放り出されることはないがこのまま落下傘が開けなければ確実な死が待っている。


「※※※!」


「@#¥&@#¥%」


 無我夢中で落下傘のを起動させようとするが。重力に逆らい腕や体を動かすの難しく思うように動かせない。コルセイはリュケスに自分を固定せると足拘束を解き落下傘を起動させる。


 バッ!!!


 激しく海面を打つような音と共に舟の数倍はある麻の布が開かれる。一瞬、空気の抵抗で体が舟から放り出されそうになるがリュケスのおかげで放り出されることは免れた。


「成功した」


「おお。飛んでるぞ」


 緩やかに大瀑布の中心へと落ちる落下傘つきの小舟。底が見えない奈落には何が待っているのだろうか? コルセイは奈落の底を覗き込むがその先には何か見えることはなかった。


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