表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/326

第四章 第55話 大瀑布を攻略せよ

 

 五年と呟いて早一時間。コルセイの時間は止まったままである。ルセインもコルセイがダンジョンを出たい事を知っていた。


 しかし、わずか数十日で脱出するつもりだった聞き、眉を八の字にして腕組みをしたままである。ガイブはなんと言葉をかけていいか分からず、コルセイの肩に手をかけようとしたところでコルセイの時が動き始める。


「ガイブすまない。ちょっと外に行って頭を冷やしてくる」


「一人で大丈夫か?」


「大丈夫だ。まだ諦めてもいない。ただ、どうしても口にしておかないと気持ちの整理がつかなそうなんだ。ちょっと待っててくれ」


 ガイブとナンナに見守られながらコルセイは扉を後にする。雪道を少し戻りウッドハウスから距離をあけると両腕に力を入れ、力いっぱい叫ぶ。


「ミドガァァァァァァ! 覚えてろよ。ダンジョンでたら絶対ぶっ飛ばす!」


 コルセイは踵を返すと再びウッドハウスへと戻る。先程の死んだの魚の目から正気に戻り、いつもの隈深いコルセイの顔になるとガイブとナンナは胸を撫で下ろす。


「ルセインさん申し訳ないのですがまた相談にのってもらえますか?」


「正気を取り戻したのかね。もちろんだとも。私に疲れという概念はない」


 コルセイはガイブとナンナに休んでもらうように頼むとルセインと向かい合い再び話を始める。


「以前の旅では十七階から二十一階へそこまで時間がかからなかったように話をされていました。しかし、今は数年という途方もない時間がかかってしまう。それは何故ですか?」


「ふむ。先程説明したが十七階からは主に水に関わるダンジョンとなる。水路から河へ、川から急流へ、その先は大瀑布につながっている。水が無い陸地や地下道を通り迂回しながら大瀑布の中心に行かなくてはならない。ダンジョンは広がっており、陸地は昔よりかなり削られている。私が俯瞰して確認した限りでは行けないという事はないが時間は大幅にかかるという見解だ」


 ルセインの話はまさしくその通りである。大瀑布の中心ということであれば泳いで行くわけにはいかない。滝から落ちた地点で確実にあの世行きであろう。


「ルセインさん。もう一つ聞きたい。十六階に着いた地点で扉が無くなってしまったのですがあれは元に戻りますか?」


「ああ。あれは私が消したんだ。この階限定ではあるが扉の出し入れは私ができる。私が死ぬ事はないだろうが上から魔物が降りてきて私のお気に入りのこの場所を破壊されたら嫌だからね」


「では、もう一つ。上の階にあった道具や日用品などは他の階でも利用する事はできるんですか?」


「できるよ。ダンジョンが作りだしたものは実在している。仮にダンジョンの外に出たとしても使えるよ」


 コルセイは短くルセインに礼を言うと椅子を立ち上がり廊下を歩き始める。小さく呪文を唱えるように何かを口にし、何往復も廊下を行ったり来たりしている。二時間ほど歩くと紙の上に何やらメモを取り始めた。


「コルセイ君、何か思いついたのかね?」


「はい。俺はどうしても一ヶ月で外に出たい。もし、俺の考えがうまくいけば準備を含め二十日程で二十一階にたどり着けるはずです」


「なんと! それは素晴らしい。作戦を聞いてもいいかい?」


「もちろんです。むしろ、聞いてください」


 コルセイとルセインの話し合いが再び始まる。最初の内は厳しい表情でコルセイの話を聞いていたルセインであったが、しばらくすると意見を交わすようになり、一時間もすると具体的に二人で話をまとめ始めていた。


 しばらく休んだガイブが二人の元へと戻るとコルセイは目を血走らせながらメモを完成さていた。


 ドォ


 勢いよくコルセイが後ろに倒れるとそのまま寝息を立て始める。ルセインは愉快そうに笑いながらコルセイに毛布をかける。


「ガイブ君、起きたら忙しくなる。もう少しナンナちゃんと休んでいるといい」


 ガイブは頭にクエスチョンマークを浮かべながら部屋へと戻り、ルセインは笑顔を作りながら冷めたお茶に手をつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ