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第四章 第51話 銀世界

 

 扉を開けるとそこは銀世界だった。


「さ、寒っ!」


「ガウッ!」


 コルセイとナンナは両腕で身体を抱きしめるとぶるぶると身震いをする。トラップや襲撃は予想していたがこの寒さは予想外であった。


「人族っていうのは寒がりだな」


 ガイブは大袈裟だなと言いたげな顔をしている。コボルトの厚い毛並みは耐寒性能はもちろん断熱性能も兼ね備えている。なので人族よりも寒暖差については圧倒的に強い。


「お前はモコモコの毛並みがあるから寒さに強いかもしていないけど、俺たちは基本頭にしか毛は付いていないからな!」


 コルセイは麻袋の中を乱暴にかき分けると以前利用していた外套を取り出し体に身につける。


「ほら、ナンナもこれを着とけ!」


「ガウス!」


 コルセイは自分の冬用の服を渡す。ミドガーが持ってきた荷物は何から何まで道具袋に入れてある。プライバシーなどはない! と改めてミドガーに不信感を募らせるがとりあえず今は感謝しておこう。


「ハッハッハ。黒と黒でコルセイとお揃いじゃないか似合っているぞナンナ!」


 むっと膨れっ面をするナンナ。洗い立ての服だ、できれば文句を言わないで着て貰いたい。とりあえず凍死は免れた。しかし、暖をどこかで取らなくてはならなければコルセイとナンナはいずれは死んでしまうだろう。


 三人は辺りを見回す。雪が積もっていて正確な広さは把握できないが以前見たナスウェルの広場程度は視界が開けており。その先は針葉樹が無数に生えており確認する事はできない。


「静かだな。何か気になるものはあるか?」


 ガイブとナンナは耳や鼻を動かし辺りを探るがとりあえず差し迫った危機は無さそうだ。


「取り敢えずは大丈夫だ。しかし……この先にたぶん人族がいるぞ」


「何? 人? どんなやつだ?」


「それはわからない。この先に少し行ったところに建物が一つ。中からは火を燃やす音がする」


「建物に何かいるのかもしれないが本当に人なのか? なぜ分かる?」


「ガウゥゥ」


 ナンナが困惑した声を出す。何か感じとったようだ。


「うむ。何故か、それは、この先からコルセイと同じような匂いがする。だからだ」


「はぁ? 俺?」


 どういう事だろうか? 急にこの先が不安になる。一度上へ戻ることも視野に入れ背後を振り向くが追い討ちをかけるような事態が発生する。


「おい。扉がないぞ」


 足跡の先にあるはずの扉がない。扉からは真っ直ぐに歩いてきた。雪こそ舞ってはいるが視界を失うような悪天候ではないはずだ……。


「先に進むしかないということか」


 今ある戦力を総動員、警戒をしながら進む。ほとんどのゴブリンが再起不能となってしまい、ゴブと二号を除いて現存するゴブリンは六体。ポーターとして今は動いているが戦闘の際は荷物を捨てナンナを守るように考えている。リュケスの消耗も激しい赤鎧級の敵が出た場合はそのまま戦えるか不安が残るレベルである。


「着いたな」


 目の前は雪に半分埋もれたウッドハウス。煙突からは煙が出ており、中で誰かが暖をとっているのが分かる。窓からは灯りが漏れており街で感じるような生活感を感じる。


「ガイブ確認するぞ。ここはダンジョンだよな?」


「ああ」


「中に何かいるよな?」


「ああ」


「たぶん人なんだよな?」


「ああ」


 このダンジョンには本当に驚かされてばかりである。礼拝堂、街、大掛かりなギミックにウッドハウス。しかし、この家については何故か不安を感じない。友人の家に遊びに向かうような安心感がある。


「ガイブ俺が先に入ってみる。ナンナを守ってやってくれ」


「マカセロ」


 雪をかき分け、ウッドハウスの入口へと向かう。玄関横の窓からも灯りは漏れており玄関にトラップなどの形跡もない。


(どうしたものか。ドアを蹴破って侵入するのも何か違う気がする)


 後ろを向きガイブとナンナに合図をするとドアを二回ノックする。ノックの返事など当然ないだろうと予想していたが意外にも返事がくる。


「待ってたよ。さぁ中に入ってくれ」


コルセイはガイブと顔を合わせるとおずおずと建物の中へと入って行った。


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